セリーグ全滅
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第五章
「守備妨害でアウトになってな」
「それあまり見ないわね」
「しかも試合がそれで終わったんだ」
「日本シリーズで」
「和田監督がそれで抗議した時に」
まさにその時にというのだ。
「テレビでホークス日本一って出たんだ」
「凄い展開よね、何度聞いても」
「二〇一四年にな」
「他にもあるわよね」
「二〇〇八年なんか十三ゲーム差をひっくり返されたんだ」
まさに圧倒的なゲーム差をだ。
「ブイやねん阪神って言って」
「それも大ネタよね」
「スポーツ新聞が特集の雑誌出して」
「それで巨人が優勝ね」
「ヤクルト相手に最後でエラーで優勝逃したりな」
「本当にネタ多いわね」
「カープの比じゃないだろ」
カープファンの妹に言った。
「もうな」
「凄過ぎるわよ」
これが千佳の返答だった。
「幾ら何でもね」
「やっぱりそうか」
「他にそんなチームないと思うわ」
「プロ野球のチームでか」
「世界のどのスポーツでもよ」
「他にないか」
「そこまでネタあるチームはね」
兄に真顔で話した。
「ないわよ」
「そうかな」
「そう思うわ、しかしね」
「しかし?」
「カープだって苦労してきてるのよ」
千佳は自分が愛するチームの話をした。
「いつもお金がないって言われてるでしょ」
「赤ヘルだから赤貧だったか?」
「もう最初の頃なんてね」
それこそというのだ。
「お金がなさ過ぎて糾弾存続の危機で」
「樽募金だったな」
「それもした位でね」
「苦労してきたんだな」
「しかも弱くて」
お金がないだけでなくというのだ。
「Bクラスの常連で」
「山本さん衣笠さん出るまでか」
「そしてお二人が引退したら」
チームの看板であり精神的支柱だった彼等がというのだ。
「またね」
「低迷したな」
「ずっとBクラスで主力選手は出て」
「苦労してきたな」
「そんな中ずっとやってきたから」
だからだというのだ。
「前向きでないとね」
「応援出来ないか」
「そうよ」
「そこは阪神と一緒か」
「何があってもよ」
それこそというのだ。
「前向きでないとね」
「お互いそうなんだな」
「そう、そして」
そうであってというのだ。
「交流戦負け越してもよ」
「前向きじゃないとな」
「まして順位もゲーム差も変わっていないなら」
そうであるならというのだ。
「尚更でしょ」
「それはそうだな」
「じゃあ金曜からね」
「また頑張らないとな」
「そういうことよ」
「それじゃあ落ち込むのは今だけだな」
寿は顔を上ゲて言った。
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