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ドリトル先生とサーカスの象

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第四幕その二

「牧畜をしているからだよ」
「それで羊や山羊や豚が襲われるから」
「だからだね」
「狼と七匹の子山羊とかね」
「三匹の子豚とかね」
「そうした童話が生まれたんだ、けれど日本は牧畜をしていなかったから」
 だからだというのです。
「かえって有り難かったんだ」
「人も襲わないし」
「尚更だね」
「日本は猛獣の少ない国だけれどね」
「狼は入っていないね」
「日本で猛獣は熊位だね」
 先生は皆に答えました。
「その熊も本土ではツキノワグマで」
「大人しいよね」
「比較的ね」
「体格も小さいし」
「羆と比べるとずっと怖くないね」
「怖いことは怖いけれど」
 それでもというのです。
「確かにヒグマや虎や豹と比べるとね」
「怖くないね」
「ツキノワグマは」
「それで狼は猛獣に入っていないわ」
「日本ではね」
「そうだよ、本当に狼は怖くないよ」
 先生は皆にもお話しました。
「狂暴でも残忍でもないよ」
「血に飢えてもいない」
「狡猾でもない」
「むしろ農耕社会だと有り難い」
「そうした生きものよね」
「そう、そしてゴリラもね」
 あらためて彼を見て言いました。
「完全な菜食主義で優しくて穏やかで」
「僕達暴力なんて振るわないよ」
 他ならぬゴリラの言葉です。
「どんな命でも襲わないよ」
「ゴリラはそうだね」
「暴力なんてとんでもない」 
 全否定する言葉でした。
「誰に対しても振るったら駄目だよ」
「それが君達の考えだね」
「威嚇したり出したものを投げて抵抗しても」
 それでもというのです。
「殴ったり蹴ったり罵ったりなんか」
「しないね」
「何があってもね、心の中にないよ」
「人間はそうしたことをする人がいるよ」
 先生はまた悲しいお顔になって言いました。
「けれどね」
「ゴリラはそんなことしないから」
「むしろ人間よりずっと優しいね」
「そして穏やかで」
「非暴力的ね」
「それなのに外見が怖そうっていうだけで」
 まさにそれだけでというのです。
「怖がられるのがね」
「残念だよね」
「本当にね」
「人はお顔で判断したらいけないけれど」
「生きものだってそうだね」
「そうだよ、僕は学者だから真実を学んでそれを伝えるよ」
 先生は言いました。
「これからもね」
「それでゴリラのこともだね」
「狼のこともだね」
「サーカスを観に来る人達にもお話するね」
「そうしていくね」
「サーカス団の皆の健康も観てね」
 団長さんにお願いされた通りにというのです。 
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