姪を大事にすると
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第一章
姪を大事にすると
木田俊永は動物園で働いている、独身だがよく兄の娘である真央が家に来て休日等はよく一緒に遊んでいるが。
面長で丸い目に細長い眉があり唇が小さく黒髪を真ん中で分けている痩せた一七〇程の背で自分そっくりの兼業農家の兄の義春に言われることがあった。
「悪いな、いつも真央と遊んでもらって」
「いや、俺独身だし」
俊永はこう兄に返すのが常だった。
「昔から子供の相手好きだし」
「自信もあるな」
「そうだしな」
「こっちも出来るだけな」
義春は苦い顔で言うのが常だった。
「真央と一緒にいるけれどな」
「兄貴最近忙しいしな」
「女房もな」
夫婦でというのだ。
「何かとな」
「仕事にご近所のことでな」
「最近近所に猪や熊も出てな」
「獣害だな」
「うち農業もやってるからな」
だからだというのだ。
「だから本当にな」
「そういうの出たらな」
「注意しないといけないからな」
だからだというのだ。
「休日でもな」
「忙しいよな」
「それでな」
弟に申し訳ないという顔で言うのだった。
「お前が休みだとな」
「頼んでるな」
「そうだよ、お礼はするからな」
「お礼って何だよ」
「いい人紹介するとかな」
独身の彼に言うのだった。
「するからな」
「そんなのいいさ」
「じゃあ畑で採れたものやるな」
「それは貰うな」
兄に笑って応えた、そうしてだった。
姪の真央、茶色の髪の毛をツインテールにしていて丸顔であどけない顔立ちの幼稚園児の彼女の相手をよくしてだった。
休日自分の職場の動物園や植物園、水族館や博物館に連れて行っていた。兼業農家の兄達が忙しい時はそうしていたが。
そんな彼を見てだ、こんな声が出た。
「木田さん結婚してる?」
「あれっ、あの人独身でしょ」
「けれどいつも小さな女の子連れてるけれど」
「前に結婚していたってお話聞かないし」
「歳のは慣れた妹さんとか?」
「いや、姪だよ」
俊永は本当のことを話した。
「実は」
「そうなんですか」
「姪御さんですか」
「そうでしたか」
「兄夫婦が忙しい時は」
彼女の両親がというのだ。
「相手をしているんだ」
「そうなんですね」
「面倒見ているんですね」
「優しいですね、木田さん」
「立派です」
彼の周りの女性達は事情を知って彼を賞賛した、そして。
女性達の人気があがりそうしてだった。
「告白されたのか」
「それも性格がいいことで評判の」
俊永は兄に話した。
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