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抗生物質を否定しても

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第一章

               抗生物質を否定しても
 科学、そんなものはだ。
 国会議員の腹愚痴和博面長で小さい目を持ち黒髪をセットした彼は常に否定してそれで主張していた。
「医者に行かなくていい」
「ワクチンは陰謀だ」
「抗生物質はいらない」
「自然療法が一番だ」
 こんなことを言っていた、だが。
 周りはだ、そんな彼を見て言った。
「昔はまともだったのにな」
「あの政党の中でな」
「急におかしくなったな」
「現代医学とか科学を否定して」
「ワクチン嫌いになったな」
 こう言うのだった。
「一体何があったんだ」
「本当におかしくなったな」
「抗生物質も目の敵にして」
「陰謀論も真に受けて」
 こう話した、だが。
 腹愚痴は女好きでもありだ、妻がいてもだった。
「また行くか」
「風俗にですか」
「内緒だぞ」
 秘書にこっそりと言った。
「いいな」
「ご家族にですね」
「ばれない様にな」
「はい、手配します」
「ではな」
「あの、ですが」
 秘書は腹愚痴に眉を曇らせて言った。
「あまりです」
「評判の悪い店にはか」
「行かない方がいいです。病気がある様な」
「病気なんてかかるか」
 腹愚痴は根拠なく言った。
「あんなの嘘だ」
「病気はですか」
「性病はかかると思うからかかるんだ」
 やはり根拠なく言った。
「だからな」
「そうしたお店に行ってですか」
「そしてな」
 そのうえでというのだ。
「ゴムを使わなくてもな」
「それでそうしたことをしても」
「かからないと思ったらな」
 それならというのだ。
「かからないんだ」
「そうですか」
「だからだ」
 腹愚痴はさらに言った。
「今日もな」
「行かれますね」
「ああ、お気に入りの娘がいるんだ」
 如何にも好色そうな笑みを浮かべてだった。
 彼は行きつけの安いが衛生管理は甚だ疑問だと評判の店に行った、すると秘書が危惧した通りにだった。
 そうした病気に感染した、しかも。
「これが梅毒で」
「えっ、腹愚痴さん梅毒か」
「手の甲に斑点があったんだよ」
 秘書は親しい友人にこっそりと話した。
「わかるだろ」
「ああ、それはな」
 友人も確かにと頷いた。
「梅毒だな」
「先生そうした店に行くの好きでな」
「かかったんだな」
「変な店にばかり行って」
 そうしてというのだ。
「病気もらってきたんだよ」
「すぐに病院に連れて行けよ」 
 友人は真顔でアドバイスした。
「さもないと大変だぞ」
「ああ、けれど先生はな」 
 腹愚痴、彼はというのだ。
「医者も病院もな」
「悪口ばかり言ってるな」
「抗生物質なんて全否定しているからな」 
 だからだというのだ。
 
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