リップクリームは必要
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第一章
リップクリームは必要
冬になり寒くなりかつ空気が乾燥してだった。
OLで主婦も持っている山本千歳細面で黒髪をショートにしてきりっとした中性的な顔立ちで背が高くすらりとしたかの徐は毎日だった。
リップクリームを塗る様になった、その彼女に夫でサラリーマンの慎吾背が高く明るい顔立ちでやや面長で痩せた彼が言った。
「もうそんな季節か」
「そう、寒くてね」
「空気が乾いて」
「私すぐにね」
夫に困った様な顔になって話した。
「空気が乾くとね」
「肌が荒れて」
「そうした体質で」
だからだというのだ。
「唇もね」
「乾燥して」
「それでよ」
そうなりというのだ。
「リップクリームがね」
「必要になるね」
「そうなのよ」
夫に家の中で話した。
「これがね」
「そうなんだね、僕はね」
夫は自分のことも話した。
「別にね」
「乾燥しないわね」
「そうした体質で」
それでというのだ。
「リップクリームも必要ないけれど」
「そうよね」
「うん、そのことはいいかな」
こう言っていた、これは二人がまだ二十代の頃の話だ。
だが四十代になると。
「やれやれだよ」
「また寒くなってね」
「空気が乾燥してきたね」
「そうね」
「それじゃあ」
慎吾は千歳に苦い顔で話した。
「そろそろリップクリーム買うか」
「それで塗るわね」
「唇にね」
こう妻に話した。
「そうするよ」
「あなた昔はね」
妻は夫に話した、二人共多少皺が出来て髪の毛に白いものが混じってきている。
「必要なかったわね」
「リップクリームはね」
「そうだったわね」
「それがね」
妻にぼやく顔で話した。
「歳を取ったら」
「お肌乾燥する様になったわね」
「水気も脂もなくなってきて」
そうしてというのだ。
「それでね」
「お肌乾燥する様になったわね」
「そうなんだ」
妻に苦い顔で答えた。
「僕もね」
「人は歳を取ると」
そうすると、というのだ。
「その分ね」
「何かと老いてね」
「それでよね」
「お肌もでね」
それでというのだ。
「唇も肌だし」
「水気も脂もなくなって」
「それでだよ」
こう妻に話した。
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