ドリトル先生とサーカスの象
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第二幕その九
「そんな人こそだね」
「赤ちゃんが虐待されて寂しく死んでも何も思わないなら」
老馬は言いました。
「その人の心に温もりや優しさや思いやりを求めたら駄目だね」
「そうだよね」
トミーは皆の言葉に頷きました。
「そんな人はね」
「その人がどんな立場でもね」
先生も眉を曇らせて言いました。
「いいことにはならないね」
「あまりにも冷たくてね」
「思いやりもなくて」
「何をするにもね」
「とんでもなく冷酷だね」
「そんな人だから」
だからだというのです。
「間違っても立場のある人にはね」
「なったらいけないね」
「立場のある人に温もりがないと」
「恐ろしいことになるよ」
「確かに立場があるとね」
それならというのです。
「厳しい判断も必要な時があるよ」
「何かを、誰かを犠牲にしないといけないとか」
「そうしたね」
「辛い判断も必要だよね」
「そうした時があるね」
「どうしても」
「そう、けれどね」
それでもというのです。
「優しさも必要なんだ」
「立場がある人にも」
「厳しい判断を下すしかない様な人でも」
「優しさは必要だね」
「命の重さ、尊さを理解していないと」
「本当に権力に反対するならテロもいいって言って」
またこうした人のお話をしました。
「テロ組織が殺人や誘拐、それも小さな子供や無関係な人達を殺してもいいって言うなら」
「もう、ですね」
トミ―がそうした人についてとても嫌そうに応えました。
「人としてどうにもならないレベルまで堕ちていますね」
「そうだよ、つまりね」
先生はトミーに答えました。
「殺された人の命の尊さを考えない思いもしないってね」
「言ってるのと同じですね」
「被害者の遺族の人達の悲しみや苦しみもね」
「わからないしわかろうともしない」
「こんな人はね」
「どうにもならないですね」
「こんな人がそれなりの立場になったら」
その時はといいますと。
「大変なことになるよ」
「権力に反対する人達が人を殺しても問題なしってするなら」
「もうだよ」
それこそというのです。
「そこには法律なんてなくなってね」
「弱い人達を守るべき法律が」
「そしてね」
そのうえでというのです。
「悪い人達がね」
「やりたい放題しますね」
「そんな世界になるよ」
「恐ろしい世界ですね」
「人の命なんてね」
それこそです。
「何の価値もない」
「権力に反対するっていう人達がやりたい放題の」
「最悪の場所になるよ」
「そうですね」
「そしてこんなことを言う人達はね」
権力に反対するなら人を殺してもいいという様な人達はというのです。
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