山の中の豪邸
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第二章
「すげえ正門もあったけれどな」
「入られないな、だったらもう前を通る位にしてな」
「スルーか」
「誰か住んでいても俺達には関係ないだろ」
「ああ、俺達が住んでる訳じゃないしな」
佐久間はそれでと答えた。
「いいな」
「人のプライバシーには関わらないことだよ」
「そうだよな」
その山に入る前にこうした話をした、そしてだった。
部全体でその山に入った、そして一行はその洋館の前を通った。確かに山の中それも奥深くにあったが。
佐久間はその洋館を前にしてだ、林に話した。
「この洋館だよ」
「確かに凄いな」
林も洋館を見て言った。
「ここは」
「そうだろ」
「ああ、ここに暮らす人なんてな」
林はそれこそと言った。
「相当なな」
「お金持ちだな」
「間違いないな」
「ああ、この洋館は」
だがここで顧問の先生が言ってきた。
「牛女の洋館だな」
「牛女ってこの六甲にいるっていう」
「牛の頭を持つ妖怪ですか」
「実はこの辺りに暮らしていて」
そしてというのだ。
「大きなお屋敷と洋館を持っているっていうから」
「それじゃあこの洋館の中に」
「牛女がいますか」
「そうかもな。けれど悪いことをする妖怪でないし」
だからだというのだ。
「別にな」
「いいですね」
「それなら」
「家ってのは誰か住んでいてその持ち主が悪人じゃなかったらいいんだ」
先生は言った。
「だからここが牛女の洋館でもな」
「いいですね」
「特に」
「そうだ、じゃあ部活続けるぞ」
先生がこう言うと二人も頷いた、そして他の部員達と共に先に進み洋館を後にした。この時部の関係者は誰も気付いていなかったが。
洋館の庭には牛女が白いテーブルにいて紅茶を飲んでいた、奇麗なイギリス風のドレスを着てそうしていたが誰もそうだった。そうして気付かないまま先に進むのだった。
山の中の豪邸 完
2025・6・17
ページ上へ戻る