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ドリトル先生とサーカスの象

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第一幕その三

「四本の足を四方から縛って座れない様にして」
「まずはそうしてね」
「人間の言うことを何でも聞く様にして」
 そうしてというのです。
「それからだよ」
「躾けるんだね」
「ずっと立たせるなんてしたら」
 先生は言いました。
「人間でもね」
「疲れきるなんてものじゃないよ」
「身体も心もね」
「そうだよね」
「それをしてね」
 そしてというのです。
「心を壊して」
「人間の言うことを何でも聞く様にして」
「それからだよ」
「耳の後ろを叩きながら芸を教え込んで」
「象の体調が悪くてもね」
「ショーに出して」
「三歳でだよ」
「その子は亡くなったね」
「そうなってしまったんだ」
「象で三歳っていうと」
 どうかとです、執事さんも言ってきました。
「ほんの子供です」
「象の平均寿命は七十歳ですから」
 先生は執事さんにも答えました。
「人間と然程変わらず」
「それで三歳ですね」
「まだほんの赤ちゃんで」
 そう言っていい年齢でというのです。
「お母さんとずっと一緒にいたいのに」
「引き離されて」
「そうした目に遭ったんですね」
「虐待ですね」
「そのものです」
 先生は悲しいお顔のまま答えました。
「そしてその子以外にもです」
「他の象達もでしたね」
「そのサーカス団では二十年の間に」
 その間にというのです。
「三十頭もの象が命を落として」
「そしてですね」
「はい」
 そうしてというのです。
「中にはショーの時にステージの外の堀に飛び込んで」
「自殺ですね」
「そうした像まで出て来まして」
「問題になったのでしたね」
「そしてそのサーカス団では生きもののショーが中止となり」
 世論の批判を受けてです。
「すると観客が激減し」
「採算が取れなくなったんですね」
 トミーも言ってきました。
「そうなったんですね」
「そして倒産したんだ」
「そうでしたね」
「とても悲しいお話だよ」
 トミーにも悲しいお顔で言いました。
「これ以上はないまでに」
「本当にあった」
「そうなんだ」
「子供の象がとても可哀想ですが」
「その子だけじゃなくてね」
「他の子もですね」
「大変な状況だったんだ」 
 そうだったというのです。
「自殺する子が出る位にね」
「そうしたサーカス団ですね」
「僕達が所属していたあのサーカス団も酷かったけれど」
「他にもですね」
「酷い団体があってね」
 そうであってというのです。 
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