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ナポレオンコンプレックス

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第一章

                ナポレオンコンプレックス
 イギリス人達はフランス皇帝であり自分達の宿敵であるナポレオン=ボナパルトを小男と馬鹿にしていた。
 だが海軍提督ホレイショ=ネルソン右目と右腕がない彼は本国にいる時に部下に話した。
「聞くと私より高い」
「あの男の背は」
「そうだ、あちらの測りはセンチメートルだが」
 ヤードでなくというのだ。
「私は一六二程でな」
「あの男は」
「一六七あるらしい」
「思ったより高いですね」
 部下もそう聞いて驚いた。
「閣下より大きいですね」
「そうだな」
「はい、それでは」
「私はむしろ小柄な方だ」
 ネルソンは自分から話した。
「しかしな」
「彼はそれでは」
「フランス人の平均身長か」 
 それ位の高さかというのだ。
「むしろややだ」
「高いですか」
「一六四という話もある」
 ナポレオンの背はというのだ。
「フランス人は一六〇位だな」
「その平均は」
「そうだとな」
「小さくはないですね」
「よく小男と言われるが」
 ナポレオンはというのだ。
「実は違う」
「そうなのですね」
「背は高い方だ」
「左様ですね」
 こうした話をした、そして音楽家で彼を皇帝になるとは愚かな男だと批判したルートヴィヒ=フォン=ベートーベンも言った。
「私よりもだ」
「背は高いですね」
「そうだ」
 まさにというのだ。
「私は一六五だが」
「彼は一六七だそうですね」
「それなら私より高い」 
 若い知り合いに話した。
「むしろな」
「そうなりますね」
「私はあの男は好きでなくなった」
「皇帝でなくなったので」
「だが真実は見る」
 厳めしい顔で話した。
「そして語る」
「貴方はそうした人ですね」
「嘘は駄目だ」
 決してというのだ。
「嫌いな相手でもだ」
「そう言われますね」
「そういうことだ、彼は小男ではない」
 ベートーベンはまた言った。
「私は神聖ローマ帝国では中背だ」
「小柄ではないですね」
「そしてフランス人は一六〇か一六四ならな」
「貴方はフランスでも低くなく」
「彼もだ、愚かだが小男ではないことは言っておく」
 ベートーベンも言うことだった、それはフランス人達も同じであり。
 彼を見てだ、こう話した。 
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