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本の要塞

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第一章

                本の要塞
 その大学は兎角古今東西から本を集めていた、それこそ目が飛び出る様な高さの本でも収集していた。
 このことについてだ、教授の一人であるチャールズ=マローン髪の毛が前からなくなった面長で鷲鼻の彼は理事長のジョン=クリストファー白髪頭で左目に語眼鏡をかけた口髭の男に言った。二人共正装であり背筋はしっかりとしている長身である。
「予算がかかり過ぎているとです」
「批判もあるな」
「しかもキリスト教の文献だけでなく」
「まさに古今東西のな」
「書物を集めているので」
「先日中国のものも購入したな」
「はい」
 マローンはクリスフトファーに答えた。
「高額で」
「そうしたな」
「そのことについても」
「批判が来ているな」
「同じアジアの日本の書物も」
「キリスト教でなくともだ」 
 クリスファーはその目を鋭くさせて語った。
「やはりだ」
「いいものはいい」
「君もそう思うな」
「はい」
 マーロンはその通りだと答えた。
「ローマの文献も集めていますが」
「ローマのものもよくな」
「ケルトについて書かれたものも」
「そうだな、偏見なくだ」
 クリストファーはまさにと答えた。
「古今東西の文献を集めるとな」
「それが知識の集積になり」
「そしてだ」
 そのうえでというのだ。
「この大学ひいては我が国の力になる」
「知識こそ力ですね」
「しかも様々な分野の学問のだ」
「文献を集めていますね」
「そうしていることもな」
「知識が力になるので」
「だからだ」
 その為にというのだ。
「神学、哲学、法学、医学だけでなくだ」
「文学、ひいては神話や魔術や錬金術のことも」
「キリスト教以外の宗教のものもな」
「所謂異教でも」
「集めている、これはこの大学創設以来続けておる」
「これからもですね」
「続ける、如何に予算がかかりわからない者が異教や異国のものをと言ってもな」
 それでもというのだ。 
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