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天空からの花

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第二章

「たまに砂漠の赤い砂が混ざってな」
「赤い雪ですか」
「それが降るんですか」
「本当にたまにな、それで今日は凄く運がいいことにな」
 老人は二人に笑顔で話した。
「花びらが降ったんだよ」
「本当に凄く運がいいですね」
「そんなことに出会えるなんて」
「ああ、ただ気を付けろよ」 
 ここで老人は笑ってこうも言った。
「降って来るのは花びらや雪だけじゃないぞ」
「雨ですね」
「そちらですね」
「いやいや、出したものだよ」  
 二人の日本人の女性に笑って言うのだった。
「それもだよ」
「それって昔ですよね」
 瑠璃子は苦笑いで返した。
「フランスの」
「昔はお家におトイレがなくて壺とかにして」
 江里子も言った、二人共フランスについては歴史についても詳しいのだ。
「溜まったら道の端に捨てていましたね」
「お家の窓から」
「それは昔のことで」
「今は違いますね」
「いやいや、確かに今はトイレがあるよ」 
 老人はまさかと笑って言う二人に彼も笑って返した。
「けれど別のところから降るんだよ」
「というと花びらや雪や雨と同じで」
「お空からですか」
「砂漠に駱駝とかもそれもあったらな」
 それならというのだ。
「やっぱりな」
「竜巻がお空に上げて」
「風がこちらまで運んできて」
「それで降るんですね」
「そうなんですね」
「そうなんだよ」
 これがというのだ。
「雪とかと一緒にな」
「砂漠にあるので」
「そうしたものも降りますね」
「それに降られたら運がないな」
 老人は笑ったまま話した。
「こっちも滅多にないがな」
「そうしたことがあるんですね」
「そうですね」
「そうだよ、まあ今は花びらが降ってるからな」
 見れば今も降っている、ひらひらと無数の花びら達が空から降り続けている。
「素直に奇跡を喜ぼうな」
「素敵なロマンを」
「それをですね」
「そうしような」
「はい、そうします」
「折角ですから」 
 二人も笑顔で応えた、そうしてだった。
 老人と共に降り注ぐ花びら達の中にいた、それは二人にとって最高のロマンで心から堪能した。二人共インターネットでその状況をスマートフォンで撮影して投稿すると。
「バズったわね」
「そうね」
「誰が見ても素敵だし」
「そうなったわね」
「いや、本当に最高のロマンよ」
「プロヴァンスにいるだけでもだったのに」
 二人共日本に帰ってから笑顔で話した。
「本当に素敵だったわ」
「あんな思い滅多に出来ないわね」
「それだけによかったわね」
「一生の思い出よ」
 最高の旅行だったとだ、二人で話した。そして実際に二人はこの時のことを最高のロマンだと言った。一生で最高のそれであったと。


天空からの花   完


                   2024・10・13 
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