東方酔夢譚
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第二章
「是非より一層です」
「日本を知ってもらいたいですね」
「その美術を」
「アメリカそして他の国にも」
「日本にも」
「そうですね、私は貴方を教えましたが」
フェノロサは岡倉に彼自身とのことも話した。
「貴方に教わることもあり」
「逆にですか」
「そしてこうして共に飲み」
そうしてというのだ。
「共に歩く」
「友ですね」
「そうでもあります、私は日本に来てその美しさを知り」
そうしてというのだ。
「そのうえで貴方とも出会いました」
「弟子であり師匠であり友でもある」
「お互いにそうであり」
そしてというのだ。
「絆を持つ。その貴方とも出会い」
「そうしてですか」
「より一層深いものを感じています」
「そうなのですね」
「貴方は同志でもあります」
フェノロサは岡倉にこうも言った。
「志を同じくして共に働く」
「日本美術の為にですね」
「そうです、そしてそれは」
「私もです」
岡倉はフェノロサに自分の想いを隠さずに告げた。
「貴方と出会えてです」
「よかったですね」
「一生の宝です」
そうだというのだ。
「私一人ではとても」
「ことを為すことは出来なかったですか」
「はい」
そうだというのだ。
「ですから」
「それ故に」
「貴方と出会えてよかったです、そしてこれからも」
「日本の美術の為に生きられますね」
「そうします、そこに貴方もいてくれて」
「私も同じ心なので」
フェノロサは岡倉に答えた。
「これからもです」
「私と共に働いてくれますか」
「この生涯を賭けて」
「日本の美術の為に」
「この身と心を捧げます」
そうするというのだ。
「これからも」
「そう言ってくれますか、では」
「働いていきましょう」
「二人で」
笑顔で話してだった。
二人で日本の酒を飲み料理を楽しんだ、そうしてだった。
その中であらためて誓い合った、日本の美術を守り世界に知らしめようと。誓い合ったのであった。
二人の日本美術への貢献は歴史に残っている、西洋美術一辺倒になっていた日本の美術を復興させたとも。若し二人が出会っていなければそうはならなかったかも知れない。そう考えると偉大な出会いであっと言えるであろう。
東方酔夢譚 完
2025・1・11
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