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故郷のフランスは寒いので

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第二章

「ふわりの散歩も遅くしたよ」
「朝早くで」
「そうしたよ」
「そうしないとね」
「ふわり暑いの苦手だしな」
「そもそもね」
 ここで百合子は息子に言った。
「ふわりはフランスの娘でしょ」
「トイプードルってフランスだよな」
「生まれはね」
「ふわりは日本生まれでもな」
「それでもね」
 そうであってもというのだ。
「元々はね」
「フランスだよな」
「フランスは寒いのよ」
 息子にこのことを話した。
「日本よりもね」
「それもずっとだよな」
「パリって北海道より北にあるのよ」
「それって凄いな」
「川が凍るし」
 セーヌ川がだ。
「そうした場所だから」
「寒い国の娘なんだな」
「だからね」
 それでというのだ。
「そのことはね」
「頭に入れておかないとな」
「日本の夏は」 
 それはというのだ。
「実際にね」
「ふわりにはきついか」
「フランスの娘にはね」
「じゃあこれからも散歩の時間を考えて」
 洋介もそうしてと話した。
「そしてな」
「そのうえでね」
「ああ、お水もあげてな」
「お部屋も涼しくしてよ」
「毛も短くしないとな」
「トイプードルは毛が濃くてあまり抜けないでしょ」
「だからな」
 こうしたこともあってというのだ。
「気を付けていかないとな」
「そうしていくわよ」
「ああ、ふわり本当に気を付けていくからな」
 今はケージの中で丸くなっている彼女に話した。
「宜しくな」
「ワン」
 ふわりは自分が言われると顔を上げて鳴いて応えた、そして洋介が水をあげるとよく飲んだ。洋介も百合子もそんな彼女を見てふわりの為に暑さには気を付けようと決意した。


故郷のフランスは寒いので   完


                  2025・5・23 
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