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痩せていた娘が

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第二章

「お前変わり過ぎだろ」
「そう?」
「何だよその胸」
 制服の上からはちきれそうなそれを見て言った。
「どうなったんだよ」
「いや、中学に入ってからね」
 佳奈はその九十ある胸で話した。
「食べているのが出たのか」
「そうなったのか」
「胸だけじゃなくて身体全体がね」
「肉付いたっていうのか」
「実は結構ね」
 これがというのだ。
「肉付いてて太ってるのよ」
「昔と違ってか」
「お尻もそうでお腹も太腿もね」
 見ればミニスカートの制服から出ている脚も結構な肉付きだ。
「こうなのよ」
「そうなんだな」
「ちなみに部活ソフトで」
 ソフトボール部でというのだ。
「キャッチャーだから」
「その体格でか」
「骨も強くて怪我しにくいからって言われて」
 それでというのだ。
「それになったの。入部した時はセンターがいいかとか顧問の先生言ってたのが」
「体格変わってか」
「センターになったの」
「俺陸上でずっとハードルだったよ」
 高野は自分の話もした。
「そうだったけれどな」
「そうだったのね」
「ああ、けれどな」
 それがというのだ。
「お前はそうか」
「いや、本当に変わったわ」
「顔と髪形は同じでもな」 
 高野はそうでもと話した。
「本当に変わったな」
「中学でね」
「子供の頃痩せててもな」
 それでもとだ、高野は考える顔になって述べた。
「変わるんだな」
「私自分のこととして実感してるわ」
「そうだよな、まあ鶏ガラじゃないことは確かだな」
「ええ、デブになったわ」
「自分で言うかよ」
「太っていて誰が困るものでもないしね」
 佳奈は笑って言った、そして学園生活をはじめたが。
 健康的に過ごした、それでむしろ高野に笑って話した。
「もっと太れる?」
「食ってるよ、これでも」
 高野も笑って返した。
「けれど陸上やってるからな」
「いつも走っていて」
「ああ、だからいいさ」
 そうだというのだ。
「俺はこれで」
「私もいいしね。これでも俊足でもあるしね」
「足も速いんだな」
「そう、だからね」
 それでというのだ。
「そっちでも頼りにされてるわ」
「成程な」
「けれどうちの学校体操服は膝までの半ズボンだから」
 今はダークグレーのブレザーとグレーのミニスカート、青いネクタイと白のブラウスの制服姿で話す。高野は男子なのでスラックスだ。
「お尻のライン出にくいわね」
「大きなそれがか」
「そっちも大きいけれど」 
 それでもというのだ。
「出ないわよ」
「スパッツだとそこが怖いのよね」
「そうなんだな」
「ましてやブルマだとお尻が下着ごとはみ出るわ」
「今時ブルマなんてないだろ、うちの部活半ズボンだしな」
「あのスポーツウェア盗撮する人いるのよね」
「だからないんだよ、まあライン出ない様にはしろよ」
 高野もそこは注意した。
「くれぐれもな」
「そうしていくわね」
 こうした話もしてだった。
 佳奈は楽しい学園生活を過ごした、もう誰も彼女を痩せているとも鶏ガラとも言わなかった。むしろその逆を言われたが佳奈は平気なので問題なかった。


痩せていた娘が   完


                 2025・5・21 
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