四月はよくても
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第六章
「勝つぞ」
「お互いにね」
「クライマックスでもな」
優勝してというのだ。
「その時もな」
「勝って」
「シリーズだよ」
それに出るというのだ。
「絶対にな」
「シリーズね」
「巨人が出るものじゃないんだ」
日本シリーズはというのだ。
「もうあそこはどれだけ出たんだ」
「飽きる位よ」
二人共その数は言いたくもなかった。
「勝ってね」
「シリーズに出てな」
「九連覇なんてね」
日本のスポーツの歴史に永遠に残る最悪の汚点である、昭和という輝かしい時代も汚してしまった。
「してね」
「あれだけ優勝したらな」
「日本一になって」
「もうな」
それこそというのだ。
「優勝じゃなくてだよ」
「最下位よ」
「ずっといればいいんだ」
「永遠にね」
「そして阪神が優勝して」
「カープがね」
ここでも二人は負けていない。
「そうしてよ」
「黄金時代だ」
「それはこっちよ」
「負けるか」
「負けないわよ」
二人は言い合った、だが。
夕食になるともう言い合わなかった、そのうえでそれぞれが愛するチームの応援を観たがそれぞれの試合と共に。
巨人の試合をチェックしてだ、笑顔になった。
「負けたな、巨人」
「見事にね」
「阪神が破ったぞ」
「やったじゃない」
「いや、何と言っても」
寿は満面の笑みで話した。
「巨人が負けるいいな」
「それもカープか阪神が勝ったら」
「巨人は負けないとな」
「絶対にね」
「巨人が勝つと」
そうすればというのだ。
「それだけで世界が悪くなるんだ」
「本当にね」
千佳もその通りだと答えた。
「だからね」
「巨人はもっともっと負けないとな」
「最下位じゃないとね」
「今日も負けて最高の気分だ」
「気持ちよく予習復習出来るわね」
「それでよく寝れる」
「最高の気分でね」
こう話してだった。
二人で実際に気持ちよく勉強をして寝た、そのうえで翌朝の試合結果のニュースを新聞とテレビで確認して笑顔になったのだった。
四月はよくても 完
2025・4・27
ページ上へ戻る