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告白は簡単にするな

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第一章

                告白は簡単にするな
 高校生の武者小路国臣は大柄で逞しい身体をしている、肉付きのいい顔で色黒できりっとしていて眉は太い。黒髪を真ん中で分けている。
 その彼が友人の西岡竜太郎に相談を受けた、彼は丸い小さい黒目がちの目と四角い顔をもっている。色白で黒髪をスポーツ刈りにしていて小太りである。
「好きな人が出来たんだよな」
「誰だよ」
「ああ、隣のクラスの長谷川さんだよ」
 学校帰り一緒に歩きながら話す、二人共黒の詰襟の制服である。
「あの人だよ」
「ああ、あの娘な」
 武者小路は西岡のその言葉を聞いて言った。
「知ってるよ」
「可愛いよな」
「それでお前好きになったらか」
「告白しようってな」
 その様にというのだ。
「思ってるんだよ」
「そうなんだな」
「今すぐ」
 西岡は強い声で言った。
「告白しようか」
「するな」
 だが武者小路はこう返した。
「考えろ」
「思い立ったらじゃないのか」
「こういうのは迂闊に動くな」 
 こう言うのだった。
「絶対にな」
「俺本気だけれどな」
「本気なら尚更だ」
 それこそというのだ。
「慎重になれ」
「落ち着くことか」
「そうだ、迂闊に動くとな」
 そうすると、というのだ。
「とんでもないことになるぞ」
「そうなのか」
「ああ、振られるぞ」
「振られてもな」
 それでもとだ、西岡は言った。
「いいってな」
「当たって砕けろか」
「そうじゃないのか」
「お前砕けてもっていうけれどな」
 武者小路は強い声で告げた。
「砕けて大丈夫か」
「振られてか」
「こころって小説あるだろ」
 西岡に文学からも話した。
「夏目漱石のな」
「自殺する話だよな」
「先生、それに先生の友達のKがな」
「確かあれだよな」 
 西岡はその作品について彼の知識を述べた。
「先生は出し抜いたな」
「Kをな」
「それで御嬢さんと一緒になったな」
「Kを追い詰めてな」
 彼が自分の考えに気付かない様にしてだ。
「そうしたな」
「そして恋愛に敗れたKはな」 
 その彼はというと。
「自殺したんだ」
「それが先生の心の傷になったな」
「一生立ち直れない位のな」
「そうだったな」
「Kも辛かったけれどな」
「先生も辛かったな」
「恋愛って怖いものだってな」
 武者小路は真顔で話した。 
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