ガリガリだったけれどお互いに

　　　　　　　　　　　　　　　　ガリガリだったけれどお互いに
　小学四年生の三島卓也はクラスメイトで近所に家がある津島友梨佳に言った、卓也は切れ長のきりっとした目で面長で唇がやや分厚く黒髪は短い。友梨佳は黒髪をロングにしていて大きな切れ長の二重の目でピンクの唇は薄い。
「お前ちょっとは食えよ」
「ガリガリだっていうのね」
「そうだよ、ガリガリだとな」
　それならといのだ。
「風が吹いたら飛ばされるぞ」
「飛ばされないわよ、そう言うあんたもね」
　友梨佳は自分に言う卓也に言い返した。
「痩せてるでしょ」
「お前程じゃないぞ」
「何処がよ、かなりね」
　彼を見て言うのだった。
「痩せてるわよ」
「お前みたいにか」
「同じでしょ、あんたこそよ」
「食えっていうの」
「それでムキムキになりなさいよ」
　こうも言うのだった。
「悔しかったらね」
「悔しい訳あるか」
「それ言うと私もよ」
　子供だった二人はこう言い合った、だが。
　二人は小学校を卒業すると友梨佳が中高一貫の私立校に入り卓也は地元の中学に進み交流はなくなった、もう会うこともなかった。
　だが卓也が大学に入ると。
　入学式の後の学部のガイダンスの時だ、彼は隣の席の胸の大きな女性を見て目を瞠って声をあげた。
「まさか津島？」
「えっ、三島？」
　相手も彼を見て声をあげた。
「ご近所の」
「あのガリガリの」
「そう言うあんたもでしょ」
　友梨佳はまずはこう返した。
「ガリガリでしょ、けれど」
「空手やってるんだよ、二段な」
「筋肉あるわね、今は」
「そう言うお前もな」
　卓也は友梨佳に言った。
「かなりな」
「胸あるっていうのね」
「まるで別人だな」
「お互いね、まあ詳しい話はね」
「ガイダンスはじまるからな」
「後でね」　
　とりあえずここで中断してだった。
　二人はガイダンスを受けた、その後でだった。