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太っていると言われて

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第一章

                太っていると言われて
 東原希子は子供の頃太っていると言われた、そしてだった。
 その時から必死にダイエットをはじめた、水泳部に入って大好きだったお菓子を食べることを止めてだった。
 必死に痩せた、それで大人になるとだ。
「いつも思うけれどスタイルいいわね」
「これでも頑張ってるのよ」
 大学生になった彼女は友人の高木秋穂に笑顔で話した、茶色に染めた髪の毛をロングにしていて切れ長の奇麗な二重の目とピンクの大きめの唇を持っている、細面で眉は奇麗で一六〇位の背は本当にすらりとしている。
「毎日水泳もして」
「食べるものも考えて」
「そうしてね」
「そうなのね、私なんてね」 
 秋穂は黒髪をポニーテールにしている、明るい顔立ちで顎と頬はすっきりしている。唇は小さく華が高い。背は希子より五センチは高く胸が大きい。
「特にね」
「何もしていないの」
「アルバイトしているだけで」
「スーパーのアルバイトよね」
 希子は秋穂のアルバイトのことを尋ねた。
「そうよね」
「そうよ」
 秋穂もその通りだと答えた。
「大学通いながらね」
「バイトしてるわね、スーパーで働いていたら」
 それならというのだ。
「ずっと立って歩いてで」
「それが運動になるから」
「だからね」
 それでというのだ。
「いい運動になってるわ」
「そうなのね」
「運動して」 
 希子はあらためて話した。
「そしてね」
「食べるものも考える」
「そうしないとね」
 さもないと、というのだ。
「太るから」
「太ることは嫌よね」
「小学生の時に言われて」 
 名前も顔も忘れた男子生徒にだ。
「ずっとね」
「気を付けてるのね」
「そうしてるわ」
「そうなのね」
「そして」
 そのうえでというのだ。
「二度と言われない様にするわ」
「太ってるって」
「デブとかね」
 こう言ってだった。
 希子は泳ぎ続け食事にも気を付けていった、それは就職して結婚してからもだったが四十代になった頃にだ。
 小学校の同窓会に出てだ、とある太った男に言われた。
「俺のこと覚えてる?」
「ええと、誰だったかしら」
「ほら、中川」 
 彼は自分から話した。
「中川典弘だよ」
「ああ、同じクラスだった」 
 希子は言われて思い出した。
「三年と四年の時」
「あの時は御免な」
 彼、中川は名乗ってから謝罪した。 
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