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Fate/WizarDragonknight

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トラウマ

 リゲルから提示された三日。
 翌日になったため、残り二日ということになる。
 可奈美は、手にした愛刀、千鳥(ちどり)を見下ろしながら、大きくため息を付いた。

「……うん。大丈夫。行けるよ」

 自己暗示を繰り返しながら、可奈美は千鳥を抜く。
 御刀と呼ばれる神聖を宿すこの刀を手に、可奈美はその異能の力を引き出した。

「写シ!」

 すると、千鳥を通じて可奈美の体に変化が訪れる。
 肉体は白く発光し、霊体が纏う。この世界の肉体は幽世のものと入れ替わり、全身に清めの力が漲る。

「や、やった……!」
「成功だね、可奈美ちゃん!」

 そういって可奈美に駆け寄るのは、同い年の赤毛の少女。
 明るい顔付と好奇の目が特徴的の少女。可奈美とはすでに何度も苦楽を共にしてきた、聖杯戦争を戦い抜いてきた可奈美のサーヴァント。
 セイヴァー、結城友奈。
 彼女はツンツンと可奈美の白い体に触れ、指をさする。

「今わたしが触ってるこれは、可奈美ちゃんの体だけど体じゃないんだよね?」
「うん。私も詳しくは説明できないけど、幽世(かくりよ)っていう……この世界の裏側? から千鳥を通じて私に力を与えてくれるんだ」
「おお……! よく分からないけどすごい!」

 友奈が褒め称える傍ら、彼女の隣に並ぶ別の少女が、可奈美へ尋ねた。

「えっと、あの巨人のマスターが、多分その___見滝原何とかって会社にいるんだよね?」

 淡い髪色と、友奈に劣らない明るい表情が特徴的な少女。
 ランサーのサーヴァントであり、可奈美たちと同じく聖杯戦争を止めるために力を尽くす少女、立花響。

「うん。明後日(あさって)、リゲルさんから一緒にそのマスターを止めようって話になってるんだ。私たちも協力しようってことになった」
「それはいいんだけど……可奈美ちゃん、戦えないんだよね」

 友奈は心配そうな表情を見せた。

「ほら、この前わたしたち、市長さんに負けちゃったけど……可奈美ちゃんは人がくるまでずっと……その、やられてたから……」
「……」

 友奈の言葉に、可奈美は思わず腕をさすった。
 彼女の言う通りだった。
 先日、まさにこの公園での出来事だ。見滝原市市長、キング・ブラッドレイがこの場に現れ、可奈美、友奈、そしてもう一人、ライダーのサーヴァントを倒し、聖杯戦争の刺客を葬ってみせたのだ。しかも彼は刀使という存在に興味を持ち、可奈美の限界を知ろうと、何度もその身を切り刻んだ。
 それ以降、可奈美は握っている刀の力を引き出せなくなっていた。震えながら、可奈美は大きく息を吐いた。

「へ、平気だよ! ほらこの通り! もう時間も経ってるし!」
「よかったッ! なら、もう戦えるんだねッ!」

 響はにっこりとほほ笑んだ。

「じゃあ行くよ可奈美ちゃんッ!」

 響はそう告げ、首から下げられた赤いペンダントを手にする。
 ペンダントは陽の光を反射し、黄色の光を放つ。
 そして。

『Ballwisyall Nescell gungnir tron』

 響の口から唄が流れる。
 すると黄色の光がペンダントから溢れ出し、響の体を包み込んでいく。その中では、響が演舞をしていくごとに、全身に黄色の武装が装着されていく。
 白いマフラーが首に巻かれ、シンフォギアと呼ばれる鎧をまとった響が、光の中より登場した。
 シンフォギア、ガングニール。
 そんな彼女の力に関する専門用語がすぐさま出てくるほど、可奈美は何度も響の力を知り尽くしている。

「よし……じゃあわたしも!」

 友奈は意気込み、スマホを掲げる。
 すると、周囲に桃色の花びらが舞い踊る。
 それは、次々に友奈の体に定着していく。桃色は色濃く重なり、白となる。
 勇者。
 友奈の戦闘形態として、何度も可奈美の助けになってくれた姿だ。
 可奈美は響、友奈へ千鳥を向けながら、不敵な笑みを浮かべた。

「じゃあ、手加減なしでお願い!」
「オッケーッ! 行くよ、可奈美ちゃんッ!」

 まず動くのは、響。
 その卓越した体術が可奈美を狙う。
 が、可奈美の目は、響の動きをしっかりと捉え、受け流していく。

「やあああっ!」

 そして反撃にと、可奈美の千鳥が、素早く薙ぐ。
 響はしゃがんでそれを避け、蹴りで応戦。
 可奈美はその蹴りも回避し、続く響の殴打も平手で受け止める。

「いい動きだよ!」

 響はにっと笑みを見せる。
 可奈美は短く「ありがとう!」と礼をいい、千鳥で反撃した。
 響は背中を反らして千鳥を回避し、そのままバク転で可奈美から距離を取った。

「次はわたしだよ!」

 入れ替わりに躍りかかってくる友奈。
 彼女の卓越した体術に対し、可奈美は剣術で応戦。
 可奈美の目は、常に相手の動きを見て、避けるための指令を脳に送っている。
 全てを避け切り、平手で友奈の拳を右下へ反らす。振るった剣は、友奈が手首を受け止め、互いの攻撃を受け止め、顔も目と鼻の先に接近しながら、友奈は笑みを浮かべた。

「結構大丈夫そうだね!」
「うん……! これなら、全然戦えるよ!」

 可奈美が返事をすると同時に、可奈美と友奈は互いに離れた。

「よし! じゃあ、友奈ちゃん、響ちゃん! 二人同時に来て!」
「了解ッ!」

 響と友奈は、同時に可奈美へ迫ってくる。
 それぞれ、きっと優れた師より技術を学んできたのだろう。
 写シの可奈美は、全力で二人の動きを目で捉えていく。

「よく見る、よく聞く、よく感じ取る!」

 可奈美の剣術は新陰流として、相手の動きに合わせて反撃を得意とする。
 友奈の拳を受け流し、響の蹴りを受け止める。それぞれを平手で弾き落とし、剣で反撃。
 可奈美の剣は、友奈が盾にした桃色の光と相殺され、弾かれる。その隙に響が躍りかかってくるが、可奈美は背中を反らし、彼女の攻撃を回避した。

「戦えないって聞いたけど、全然問題ないねッ!」

 響の声が聞こえた途端、可奈美の足が宙を舞う。
 響が可奈美へ足払いをしたことに気付いた時には、もう友奈が拳を放っている。
 可奈美は千鳥を地面に差し、体を安定させる。空中に投げ出された足を駆使し、友奈の拳を蹴り飛ばした。

「……!」

 着地し、二人から距離を取った可奈美は、また千鳥を構える。

「……フフッ!」

 確かに、さっきまで可奈美は剣が使えないほど、体にトラウマを負っていた。
 だがやはり、剣術が好きだ。
 可奈美はそう確信しながら、対峙する二人の雰囲気が変わっていくのを感じた。

「……来る!」
「可奈美ちゃん、行くよ!」

 友奈の拳に桃色の光が宿る。
 それが何を意味するかは、可奈美も重々承知している。
 そして。

「勇者パンチ!」

 友奈が放つ主力技。周囲に花びらを散らしながら、凄まじい威力で拳を放つ友奈の象徴ともいえる技だ。
 可奈美は、千鳥でそれを受け流し、反撃しようとするが。

___さて……これからひたすら君を切り殺すが……君はあと何回で死ぬのかな?___
「がっ……!」
「え!?」

 回避も反撃もしなかった可奈美の身体がくの字に曲がる。
 友奈のパンチは写シを貫通し、可奈美の体を大きく吹き飛ばした。

「可奈美ちゃん!」
「ええッ!? 今の、完全に避ける流れだったのにッ!?」

 二人の悲鳴を聞きながら、可奈美の身体が地面を跳ねる。

「ぐっ……!」

 可奈美は起き上がり、フラフラの千鳥を構える。
 だがすぐに痛みに堪え切れなくなり、仰向けに倒れた。その手から千鳥が零れ落ち、生身に戻ってしまう。

「か、可奈美ちゃん! 大丈夫!?」

 友奈は慌てて元の姿に戻り、可奈美に駆け寄る。彼女に助け起こされながら、可奈美は

「……うん、大丈夫」

 半ば呆然としながら、可奈美は答えた。

「あっちゃ~……」

 上を向こうとする可奈美の視界の端で、響が額に手を当てていた。

「全然へいき、へっちゃらじゃないかも……?」
 
 

 
後書き
真司「あの巨人、やっぱり参加者だったんだ」
ハルト「その可能性が高いって段階だけどね」
コウスケ「あー、もう巨人だろうが何だろうが驚かねえよ。今までもトンデモ参加者があちこちにいたんだからよ」
ハルト「二人とも流石に知ってたか」
コウスケ「あんなの、話題にならない方が難しいぜ。大学でもあのデカブツの話題で持ち切りだぜ」
真司「俺のバイト先でも、店長が凄い悩んでいるくらいだぜ。目の前に現れたらどうしようとか」
ハルト「やっぱりあの神出鬼没性が危険と直結しているよね。ラビットハウスのお客さんにも、自分の家に突然出てきたらどうしようとか言ってる人がいたよ」
真司「ハルト、一回戦ったんだろ? どうだった?」
ハルト「普通に負けたよ。そうだな……俺があの巨人だとして、実際にこの手に俺がすっぽりと包まれたってか」
真司「大きさすごいな……」
コウスケ「こんなデカい奴にどうやって立ち向かえばいいんだろうな」
ハルト「何か参考になりそうなやつは……あ、こんなのとかいいんじゃないか?」



___赦せなくて escalateして escalateして I need someone to 目を伏せ Pray in my name 太古へ祈って 折れては繋いで Again and again and again 螺旋のよう one thing___



ハルト「NieR:Automata。ほら、序盤の敵デッカイよ」
コウスケ「自決して倒してんじゃねえか!」
真司「えっと、2023年の1月から放送中止を込みで7月、2024年の7月から9月放送のアニメだな」
ハルト「人類が宇宙に逃げて、機械生命体が支配する地球で、アンドロイドたちが人類の地球を取り戻すために戦うって作品だよ。ほら、これとかあの巨人と戦うのに参考にならない?」
コウスケ「ハルト。お前分かって言ってるのか知らねえけどよ、そのあらすじ……」
ハルト「ん?」
コウスケ「いや、何でもねえ」 
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