仮面ライダージェイナス
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BEGINS・ROAD 中編
「我らはショッカーライダー! 貴様達の持つクリスタルを頂きに来た!」
ショッカーライダーと名乗ったその飛蝗の異形達は、一登と優奈目掛けて襲い掛かる。
咄嗟に優奈を連れて逃げようとする一登だったが、驚異的な跳躍によって距離を狭めたショッカーライダーの一人が殴りつける。
「ぐあっ……!?」
「一登くん!」
「だ、大丈夫だ……ハァ!」
地面に倒れる形で何とか受け身を取った一登は、自分を殴りつけてきたショッカーライダーの腹部を蹴り上げた。
予想外の反撃を受けてよろけるショッカーライダー、その隙を見逃さなかった一登は優奈の手を掴んだ。
「逃げるぞ!」
「う、うん!」
優奈は空いた手でトランクを掴むと、一登に連れられて逃げていく。
ショッカーライダー達は逃げる二人を追って、追いかける。
―――その様子を遠くから見ていた人影は一同が去ったのを見ると、驚異的な跳躍で飛び上がって去っていった。
~~~~~
どうにかしてショッカーライダー達から逃げてきた一登と優奈。
二人は近くの人気の少ない建物まで辿り着くと、物陰に隠れて様子を伺う。
「……あいつら、まだ追っているのか?」
「ねぇ、一登君。お願いがあるの」
「なんだよ。突然改まって」
「……私が囮になる、君だけでも逃げて」
優奈の言葉を聞いて、一登は目を見開いた。
険しそうな表情を浮かべる彼女を見て、歯を食いしばって反論をした。
「それは聞けない。それだったら男である俺が囮になる方がいい」
「それはだめ! そんな事をしたら、キミが死んじゃうよ!」
「君が酷い目を会うよりはいい。俺はそっちの方が耐えられない」
「嫌だよ……せっかく会えたのに君を失うなんてこと、死んでも嫌だよ!」
優奈の慟哭が響き渡る。
彼女の悲痛な言葉に一瞬戸惑う一登。
だが、ここは譲れない……大切な彼女を守るためには、どうあがいてもあの悪魔の軍団と戦う必要があった。
おやっさんから仕込まれた格闘術の腕なら自分だけで生き残ることは可能だが、彼女と自分を守り切れるのか……?
そんな考えが延々と続いていると、唐突に声が聞こえてきた。
「「見つけたぞ」」
「……!?」
一登が見上げれば、頭上にある建物の壁にいたのは二人のショッカーライダー。
彼らは手を離し、それぞれ一登達を挟み込む形で着地すると、片方は中国拳法、片方はボクシングの構えを取りながら迫る。
「クリスタルとドライバーは我々が頂く」
「お前達は我らの野望の礎となる。誇るがいい」
ショッカーライダーが二人に迫る中、一登と優奈は無意識にクリスタルを握りしめる。
二人は強く想った。彼を、彼女を守りたいと。
二人は強く思った。最愛の人を助けたいと。
二人は強く欲する。怪物を倒す力が欲しいと。
―――その時だった、二つのクリスタルが輝いたのは。
赤と白、二つの輝きを放った光がクリスタルから生まれ、その光は二人の前で強く輝く。
目を開けられないほどの強い閃光が辺り一面を包み込み、全員目を閉じる。
やがて光が収まると、そこに立っていたのは……二人の仮面の戦士。
片や、バイクの前輪後輪を取り付けた赤いボディ、頭部には大きなAの文字のような角を持ち、複眼状の青いモノアイが光る、真紅の仮面の戦士。
片や、黒いボディに白いアーマーを身に纏ったライダースーツの外見を持ち、ライダーヘルメットを模した頭部のマスクを持つ、青い瞳の仮面の戦士。
二人の戦士は一登達を守る様に立つと、ショッカーライダーに向かい合う。
突如現れた謎の戦士に二人のショッカーライダーは驚きながら質問を投げかけた。
「何だ貴様たち!?」
「何処から現れたんだ!?」
『俺に質問をするな』
「「なっ!?」」
開口一番、赤い戦士の口から放たれたのは否定の言葉。
悠然とした態度で質問を拒否した事に驚くショッカーライダー達。
そこへ追撃するように白い戦士が言葉を紡ぐ。
『というか分かってるんじゃないの? ほら、俺達の姿を見てなんかわからないかな』
「貴様……まさか、仮面ライダーか!?」
『ピンポーン! 大正解! 流石に俺達くらいになるとこれでわかっちゃうか!』
オーバーリアクション気味に自慢気味に語る白い戦士。
そんな彼を見て赤い戦士はため息をつきながら、大剣型武器を構える。
二人の仮面の戦士――仮面ライダーと呼ばれた彼らは、それぞれショッカーライダー達へ立ち向かっていった。
まずぶつかったのは、赤い仮面ライダーと中国拳法使いのショッカーライダー。
繰り出される手刀を大剣で捌きながら、赤い戦士は自身を名乗った。
『俺は、仮面ライダーアクセル。お前達のような犯罪者から人々を守るために戦っている』
「ちっ、強すぎる!? 何なんだこの力!?」
『自己紹介はすんだ、さあ……振り切るぜ!』
赤い仮面ライダー――『仮面ライダーアクセル』は大剣・エンジンブレードで回転斬りを披露しながら、ショッカーライダーを叩き斬った。
―――仮面ライダーアクセル
犯罪者によって家族を奪われながらも、街の人々を超人犯罪から守り抜くために戦った加速の戦士。
一方、白い仮面ライダーとボクシングスタイルのショッカーライダー。
ショッカーライダーの繰り出す拳によるラッシュを上手くさばきながら、白い戦士は自信満々に名乗り上げた。
『追跡、撲滅、いずれも……マッハ!』
「ぐあっ!?」
『仮面ライダー~~~マッハ!!』
白い仮面ライダー――『仮面ライダーマッハ』は車輪の付いた専用銃・ゼンリンシューターを構えて、殴りつけた。
―――仮面ライダーマッハ
止まった時間の中で蠢く機械仕掛けの悪意を最高速で倒す為に立ち上がった音速の戦士。
二人の仮面ライダーは二体のショッカーライダーを瞬く間に追い詰めた。アクセルとマッハはそれぞれベルトを操作して、必殺の一撃を叩き込もうとする。
【ACCELE・MAXIMUM DRIVE】
【ヒッサツ! フルスロットル!】
『一緒に行こうか、警視さん』
『ああ、タイミングを合わせろ』
「「うぉおおおおおお!!」」
破れかぶれに向かってくるショッカーライダー達に対し、アクセルとマッハは大きくジャンプする。
空中でそれぞれ赤と白の燃え盛る炎に包まれ、そのまま利き足を突き出した。
『『はぁぁぁぁぁぁぁ!』』
「ぐあぁぁぁぁ!?」
「がぁああああ!!」
アクセルの『アクセルグランツァー』、マッハの『キックマッハー』。
二大ライダーの組み合わせた必殺の一撃が叩き込まれる。
断絶魔を上げることもなく受けたショッカーライダー達は爆発を起こしながら消えていった。
爆炎を背に着地した二人は片や静かに、片や決めポーズを取りながら決め台詞を口にした。
『絶望が、お前達のゴールだ』
『いい絵、撮れてるでしょ』
二体のショッカーライダー達はアクセルとマッハの二人の仮面ライダーによって倒された。
目の前にて起きている出来事にただ見ている事しかできなかった二人は呆然としていた。
そんな一登へとマッハは手を差し伸べる。
『おい、大丈夫か?』
「あ、ああ」
『しっかりしてくれよ? 今回はお前達の想いが強くてでなんとかなったけど、次はそうもいかないよ』
マッハは一登を助け起こしながら注意するように呟く。
アクセルの方も優奈を立ち上がらせると、優奈の方から質問を受ける。
「なんで、私達を助けてくれたの?」
『俺に質問をするな。俺が答えなくても、既にお前達は回答を知っているはずだ』
「……もしかして、私が一登君を助けたいって思ったから?」
優奈の導き出した答えにアクセルは静かに頷いた。
……先程の一登を守りたい想いが、クリスタルに内包されている力を仮面ライダーとして実体化した。
その事にたどり着いた二人を見て、マッハは話をする。
『話は断片的にだけど聞いていたよ。お互いに相手を大切に思いやるのはいいけど、譲らなきゃいけないところはあるよ』
「でも俺は彼女を……」
「私は彼を……」
『だとしても、相手を悲しませたくない、自分を犠牲にするってのは正直言って馬鹿らしい。今ある道で悩んだってしょうがないじゃないか』
融通の利かない一登と優奈に対して、両手を広げながら答えるマッハ。
続いてアクセルが二人に語っていく。
『答えへたどり着く道は一つじゃない。お前達なら共に助かる道を見つけられる』
「「共に助かる道……」」
『はっきり言おう、ライドクリスタルの力を引き出せたお前達ならなれる。仮面ライダーに』
アクセルの言葉を聞いて、考え始める一登と優奈。
……愛する君を失いたくない。
……かといって自分自身を犠牲にするのは彼/彼女を悲しませるから駄目だ。
……だったら、取れる方法は一つ。
そう思った二人は、互いに向き合って見やる。
「一登君、お願い、一緒に戦って」
「もちろんだ。優奈、君と一緒に戦いたい」
二人は選んだ道は、『共に戦う事』。
その決断を選んだ二人に対してため息をつきながら、アクセルとマッハはトランクへと視線を移して手を翳す。
すると、トランクが一人でに勝手に空いた。
「えっ、あんなに開かなかったこれが開いた!?」
「そういえば、中には何が入っていたんだ?」
「私も詳しくは知らない、開けてみるね」
「ああ……」
一登と優奈は恐る恐るトランクの中身を確かめた。
その中に入っていたのは……独特な形状をした二つのベルト。
中央部には円形状のモニターがつけられており、側面にはクリスタルを入れられそうな装填口が設けられていた。
二つのベルトを見て、一登は手に取って首を傾げる。
「ベルトが、二つ?」
「何で二つも……もしかして、二人で変身しろってこと?」
何故同じ形のベルトが二機もあるのか。
そんな疑問で悩んでいる暇もなく、巨大な物音が響き渡る。
そこに現れたのは、ショッカーライダーの一人。
「何なんだ貴様ら……お前達が他のライダーを倒したのか!?」
「不味い、やってきたのか!」
「一登君!」
焦る一登に向かって名前を叫ぶ優奈。
迷っている暇はない……一人では進めないが、二人でならどんないばらの道でも進める。
そう思った二人は、トランクに収められていたベルト・ジェイナスドライバーを腰に取り付けた。
ショッカーライダーはそれに気づくと手に持ったライフル銃を構えるが、その前にマッハが目立つように大声を上げる。
『Ladies and gentlemen! これからお送りするのは世紀のヒーロー、仮面ライダーの誕生だ!』
「何……仮面、ライダーだと!?」
『街の誰かを泣かす者を元へ現れ、愛と平和と市民を守るために戦う戦士……それが仮面ライダーだ』
「馬鹿な、仮面ライダーはこの世から消えた! もはやいないはずだ!」
アクセルとマッハの言葉にライフル銃を構えるショッカーライダーは否定の言葉をぶつける。
彼の知る『仮面ライダー』は半世紀以上前に戦い、歴史の中に消えていった。
もはや彼らの事を都市伝説の存在として語る時代になった今、悪に逆らう正義の風はもう吹かない。
そのはずだった……だが、慄く悪魔の刺客の言葉を打ち消す様に、電子音声が鳴り響いた。
【【JANUS-DRIVER】】
電子音声と共に現れたのは漆黒のボディに無機質な灰色の装甲を身に纏った人型の仮面の戦士。
"ライドボディ"と呼称されるそれは、二人の背を向けながら立つ。
ライドボディの登場を見届けたアクセルとマッハの二人は、横顔を見せながら二人に呟く。
『じゃあお二人さん。Let`s、変身だ!』
『さぁ、お前の迷いを……振り切れ』
そういうと彼らは光の粒子となって消えていった。
二人の激励を受けて、一登と優奈はライドクリスタルを構える。
一登はマッハクリスタル、優奈はアクセルクリスタル。
それぞれのジェイナスベルトの左右に備え付けられた装填口にセットした。
そして互いに顔を見合わせて、両者は高らかにあの言葉を叫んだ。
「「変身!!」」
【ACCELE×MACH】
【RIDER FUSION】
鳴り響く電子音声と共に二人の姿が光となって消える。
そして、ライドボディに二つの光が重なり合い、その姿を変えていく。
真紅のボディに白いアーマーを身に纏わせ、青く輝く双眸の複眼を宿し、『∀』の模したアンテナを掲げるフルフェイスマスクに酷似した仮面。
やがて現れたのは真紅の炎を纏わせる、一人の仮面の戦士。
その姿を現す様に電子音声が高らかに名乗り上げた。
【BLAZING ROAD】
それは、暗闇に一つの道を照らし輝かせる一条の光。
燃え盛る焔の如く決して消えぬ輝きを放つZEROの戦士の名は……!
―――仮面ライダージェイナス ブレイジングロード
新たなる伝説へと導く仮面の戦士が、生まれた瞬間であった。
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