新オズのブリキの樵
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第三幕その九
「ヘレン=ケラーさんは」
「あの人は目が見えなくて耳が聞こえなかったね」
臆病ライオンが応えました。
「そうだったね」
「外の世界ではね」
「しかも言葉も出せなくて」
「最初はね」
「三重苦の中にあったね」
「そう言われているね」
「丁度」
臆病ライオンはトトに言いました。
「ドロシーも君もまだカンザスにいて」
「そう、同じ時代の同じ国にね」
「いた時期があったね」
「そうなんだ、ヘレンさんもアメリカ人だからね」
「そうだったね」
「だからね」
そうであるからだというのです。
「尚更ね」
「ヘレンさんのことを考えるね」
「うん、あの人はその歌も踊りもない」
「見ることも聞くことも出来ない」
「そうした世界にだよ」
まさにというのです。
「おられたんだよ」
「そうだったね」
「そう考えるとね」
本当にというのです。
「あの人は凄いね」
「歌も踊りもないのに克服した」
「見えない、聞こえない、喋れないね」
「そんな恐ろしい世界にいたのに」
「つくづく凄いね」
「全くだね」
こうお話しました、歌も踊りもない世界がどんなものか思って。
それでドロシーもです、こう言いました。
「誰にとってもそうした世界はね」
「嫌だね」
「歌も踊りもない世界なんて」
「ええ、そして美味しいものも食べたら駄目とか言うなら」
樵とかかしに応えました。
「もうそこはね」
「地獄だね」
「つぎはぎ娘の言う」
「それに違いなくて」
そうであってというのです。
「もう誰もよ」
「暮らせない」
「そんな世界だね」
「心の栄養なんてね」
笑顔がもたらすというのです。
「ないわ。そうした世界はコメディーやそうしたこともないでしょうし」
「笑いがなくなって」
「どうしようもないね」
「そうなるわ、人は笑わなくなると」
「もうそれだけでね」
「絶望しきるね」
「そうよ、だから歌や踊りは必要よ」
絶対にというのです。
「世界にね、そしてコメディーもで」
「美味しいものもね」
「必要だね」
「そうよ、あれも駄目これも駄目とかいう」
「禁止ばかりでね」
「美味しいものも歌も踊りもコメディーもとなると」
「それはもう何もない」
そうしたというのです。
「つぎはぎ娘の言うね」
「地獄だね」
「それになるね」
「そうなるわ」
こう言うのでした。
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