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空中花都

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第一章

                空中花都
 その皇帝の名前はわかっていない、インカ帝国の皇帝であることはわかっている。だが誰かはわかっていない。
 その皇帝は妃を心から愛していた、その為常に妃と共にいて政治を離れるといつも妃のことを考えていた。
 妃は花が好きだった、それで皇帝はあることを思い立ち大臣の一人にこんなことを言った。
「この都に多くの花を植えるのだ」
「花をですか」
「そうだ、ただ数が多いだけでなくだ」
 皇帝はさらに言った。
「種類もだ」
「多くですか」
「色もな。様々な花をな」
「都に植えるのですね」
「至るところにな。空いている場所にだ」 
 都のというのだ。
「植えていくのだ」
「そうしますか」
「うむ、これよりな」
 こう命じた、そして実際に民達に命じて都の空いている場所に多くの様々な種類の花を植えさせた。色も白に赤、黄色、紫、青、桃に橙とだ。 
 実に多くの花を植えさせた、すると。
 花達は都の至るところで咲き誇った、彼はその光景を宮殿の窓から見て言った。
「見事だ、では妃に見せよう」
「今の都をですね」
「そうする、共に歩いてな」
 都の中をというのだ。
「そうしよう」
「その為にですね」
「植えさせたのだ」
 花達をというのだ。 
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