フィットネス
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第一章
フィットネス
古稀を迎えた、だが。
林公毅は意気軒高だ、三食全て多く食べ肌はみずみずしく背筋はしっかりしている。
動きもいい、その彼に知り合いが尋ねた。
「いつもお元気ですね」
「いや、有り難いことに」
笑顔でだ、公毅はその知り合いに応えた。背は一七〇程でやや面長の顔で顔には幾分皺がある。髪の毛は前からなくなっていて左右に残った毛は白くなっている。顔立ちは温和なものだ。
「快適に暮らせています」
「私なんか」
その知り合いはこう言ったのだった。
「七十一で」
「わしより一つ上ですね」
「はい、ですが」
それでもというのだ。
「腰も膝も痛くて」
「そうなんですか」
「しかも胃腸も弱ってきて歯も抜けて」
そうなっていてというのだ。
「大変です、林さん歯は」
「全部あります」
笑顔での返事だった。
「今も」
「そうですか」
「はい、無事に」
「尚更いいですね、七十でそれは」
健康であることはというのだ。
「本当に凄いですよ」
「そうですか」
「その秘訣はありますか」
「それは一口では言えないです」
これが公毅の返事だった。
「ちょっと」
「そうなのですか」
「実際に一日見てもらうと」
「林さんのですね」
「そうすれば」
「それじゃあ」
それならとだ、その知り合い室井雄吾穏やかな顔の小柄な老人である彼は公毅の一日を見ることにした、するとだった。
「朝起きるとですか」
「はい、食べたらです」
公毅は散歩をしつつ雄吾に答えた。
「こうして三十分です」
「歩きますか」
「それで食後必ずです」
隣を歩く雄吾にさらに話した。
「歯を磨いています」
「そうですか」
「ではこのままです」
公毅は笑顔でこうも言った。
「歩きますので」
「三十分ですか」
「どうでしょうか」
「それでは」
雄吾は公毅の言葉に頷いてだった。
三十分実際に歩いた、するともう彼はへとへとだった。
「もうです」
「充分ですか」
「一日これ位歩いていますが」
それでもというのだ。
「これ以上はです」
「そうですか、私は雨でも傘をさしまして」
「そうしてですか」
「歩いています、そしてお買いものの時は」
その時はというと。
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