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体調伝

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体調伝

 夜風が哭いている。

 風の慟哭を聴きながら、(あま)()(だに)小学校第三覇術大隊はベルローペ=ペルシコネ大台地に布陣する。

「体調隊長、五式覇道回路戦車の設置、完了しました」

「うむ」

 部下の報告を聴いて、隊長である(たい)調(ちょう)(たい)調(ちょう)(七分の一二歳)は大きく頷く。

「後は七式陽光覇散型覇術装置の設置さえ終われば完了であるな♡」

「如何にも」

 この様子だと準備完了まで後五分と言った所だろう。

「休んでる時間は無いのである♡ 皆の者ぉ、戦意はどうである♡かあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?」

「「「「「ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」」」」」

 部下達の頼もしい返事を聴いて、体調は矢張り大きく頷いた。

「良い具合である♡ これなら()()にも勝てそうである♡な」

「えぇ」

 奴ら。

 それこそは『第九七ヴィルヴェンツェリオンカルパルラ=エッツィ=イヤァァァァァン♥帝政王国撲滅委員会』。

 委員長『()()()(だん)()』(六点八歳)一人によって構成される世界最強の覇壊軍である。

「千夜都は強敵である♡ それは幾度も敗れたこの私の身に最も染みているのであろうである♡ 今宵こそは、絶対に斃してやるのである♡」

「隊長!」

 意気込む体調の元にまた一人の部下が走ってくる。

「七式陽光覇散型覇術装置の設置、終わりました!」

「うむ! よくやったのである♡! これで準備は完了である♡」

 準備完全完了の報せを受け、体調は頭のネジを切り替える。

「すぅぅぅぅぅぅぅぅ…………ルェッディィィィィッス・アンドゥォ・ッジュェントルムェェェェェェン!!!!!!!!」

 限界まで息を吸い込み、腹筋の限り叫ぶ。

「ミー達はぁ! トゥナイットゥ! 遂ぬぃ! 千夜都を斃ぉぉぉぉぉぉぉぉぉっす!!!!!!!!」

「「「「「…………ぅぉぉぉぉぉぉぉぉ」」」」」

「ミーはぁ、負けませぇーん! お前達もぉ、精々負けない様に頑張れおるぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

「「「「「…………ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」」」」」

 そこに。

 ッチュドォォォォォォォォォン、と。

 何かが落下した。

「ゆ、ユーは……!」

 落下の衝撃波で部下達を薙ぎ倒し装備を全て覇壊したその物体を見て、体調は慄く。

「千夜都・斷誌(六点八歳)……!」

 その物体は、顔であろう物をこちらへ向けた。

 ツルツルの金属塊だった。表面は月光を覇散して照り、鶏冠のフォルムをしたそれはギィンと青く発光する。

「この時を待っていた……! 食らぇい!」

 体調は武器の〇.三ミリシャー芯を抜き、千夜都に突撃する。

 千夜都はそれを余裕を持って回避。毛の一本を伸ばし、シャー芯は疎か髪の毛よりも細いそれを体調に突き刺さんとす。

「ぬうぉあっ!」

 体調は咄嗟にスライムへ変身してそれを回避。その身を電流とし、千夜都の体内を駆け巡る。

『HAHA! どうだ苦しいだろう! これがミーの新フォーム『電流態』DAぁ!』

 どうやってか喋る体調だったが、千夜都がそれを意に介する様子は無い。その体を流れる者に気付いているのかいないのか、キョロキョロと周囲を見回している。

「クソっ、効かないか」

 体調は電流態を解除。通常フォームとなり、シャー芯を千夜都に突き刺す。

 ニ)ノシノルオソルテチエ?ソユヌネキテヒノシコ!!!!

「!?!?」

「ψ(`∇´)ψフハハハハハハハ、どうだ驚いたろう」

 ツルツルな千夜都の顔が共学に染まる。天呉溪小学校は最近男子校兼女子校から男女共学へと進化したのだ。

「これで、終わりDAあああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」

 体調は更に深くシャー芯を差し込む。

 ハウエヴァー、その背中を刺す者が居た。

「体調隊長……っ!」

 体調に五式覇道回路戦車の設置完了を報告した部下だ。非道にも、千夜都は戦闘不能となった体調の部下を覇術で操ったのだ。

「部下……っ!」

 体調はシャー芯を抜き、今にも倒れようとしている部下を支える。

「体調……隊長…………」

「待て! 話すな!」

 部下は今にも死に掛けといった様子であった。

 覇術による操りは操られる者に多大な負荷を与える。体調は千夜都の余りにも非道な行いに唇を噛む。

「隊長……」

 最期を悟った部下(√(x+5÷y)+x/653歳)は潤んだ目で体調を見詰める。

「部下……」

「お慕い、しておりました…………」

「部下ァッー!!!!!!!!」

 部下は首を項垂れて逝った。

「部下ァァァァァァァァッー!!!!!!!!」

 体調の慟哭が響く。

「あぁ、俺もだ、部下! 俺も、お前の事が好きだった……!」

 滂沱の如く涙を流しながら、体調は吐き続ける。

「済まんよぉ、済まんよぉ、助けてやれなくて…………!!!!」

 体調の涙は軈て海となった。

 神はその上に泥で大地を創った。更に糞で土を創った。土からは樹が生え、異世界から樹を食べる動物達がやってきた。

 神はい世界の侵略者たる動物達によって斃されてしまった。しかし頭は残り、久遠の時を経てその頭からは人が生えた。

 人は動物達を駆逐し、瞬く間に世界は人の楽園と成った。その過程で人は『動物は利用されただけであり動物自身に咎は無い』事を識る。人は動物を保護する事を決め、黒幕たる異世界の覇王討滅を決意した。

 そして覇暦四七× 五六年。人は遂に異世界へ到達した。

「待ってろよ……覇王!」

 体調・体調は、覇王【千夜都・斷誌】を滅する為の戦艦の甲板で、覇王城を睨みながら述べる。

「部下の仇は……必ず取る!!!!!!!!」



 夜風が哭いている。

 夜風の慟哭は、実は慟哭ではなく、結ばれた体調と部下を祝っていた。





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