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オープン戦ではわからないが

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第五章

「日本一よ」
「阪神がそうなるんだよ」
「あのね、うち何年日本一になっていないと思ってるのよ」
「二十世紀からだったよな」
「最後の日本一一九八四年昭和五十九年よ」
 千佳にははっきりわかっていたし寿もだ、二人共学業は熱心でそうしたこともわかっているのだ。成績にもその熱心さは出ている。
「それからね」
「四十年以上だな」
「日本一になっていないから」
 だからだというのだ。
「もうね」
「そろそろか」
「日本一になりたいのよ。新井さんでなって」
 日本一にというのだ。
「それからね」
「さらにか」
「そう、新井さんからバトンを受けた新庄さんがね」
「黄金時代を続けてか」
「また日本一になるのよ」
「黄金時代を続けるんだな」
「その為にもね」
 カルピスを飲んでから話した。
「来て欲しいわ」
「絶対に阪神に来てもらうよ」
 だが寿も譲らなかった。
「新庄さんは」
「譲らないわね」
「譲る筈ないだろ」 
 それこそというのだ。
「こっちも」
「そうよね」
「新井監督いい監督さんだろ」 
 真顔でだ、寿は言った。
「去年は残念だったけれどな」
「九月にね」
 まさにというのだ。
「そうなったわ」
「あれは僕も残念だった」
「巨人が優勝したから」
「そうだよ、しっかりして欲しかったよ」
 寿は心から思って言った。
「折角いいところいっていたのに、けれど」
「新井さんいい監督さんね」
「僕が見ても。だから」
 それでというのだ。
「いいだろ」
「だから次よ。監督さんもずっとじゃないでしょ」
 千佳はチーム戦略を先の先まで考えていた、それで言うのだった。
「言ってるじゃない、新井さんの次って」
「それ言ったらこっちは藤川さんの次だ」
 寿も先の先まで考えていた、二人にとってはチーム百年の大計を考えることは当然のことであるのだ。
「元々阪神の人である新庄さんこそ」
「こっちは二十世紀以来の日本一かかってるのよ」
「こっちは三度目の日本一だぞ」
「この前優勝したからいいでしょ」
「いい訳あるか淡河時代の到来だ」
「こっちこそよ」
 兄妹で言い合う、兎角だった。
 二人はカルピスを飲みながら新庄監督について話していた。それは彼に次は自分達のチームに来て欲しいというものだったが。
 北海道の意見は違っていた、エンスフィールドのファン達は話していた。
「優勝してな」
「長い間いて欲しいな」
「こんなにいいって思わなかったから」
「ずっと監督やって欲しいわ」 
 こう話すのだった、だが二人は知らなかった。あくまで自分達が愛するチームのことを話巣のだった。


オープン戦ではわからないが   完


                     2025・3・26 
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