ロバの幸せ
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第二章
「変えました」
「そうですか」
「そしてです」
そのうえでというのだ。
「実はボールは一度壊れたのですが」
「そうだったのですか」
「ネットで新たなボールを募集しますと」
そうすると、というのだ。
「かなりの数が届きました」
「友達が増えたのですね」
「はい、そして」
そのうえでというのだ。
「ご覧下さい」
「おや」
職員は見た、イーヨー今はアール=グレイという名前の彼の傍にだ。
「ヒヒン」
「ヒン」
「ヒヒッ」
三頭のロバ達が来た、黒に白、茶色の毛のだ。彼等はアール=グレイのところに来てそうしてだった。
彼に親しく寄り添った、アール=グレイも彼等に寄り添った。そうして四匹で仲よくしだしたのだった。
その光景を見つつだ、シングルトンは職員に話した。
「三頭共雄で色に合わせてブラック、ホワイト、ブラウンといいまして」
「こちらに来た子達ですね」
「最初は警戒していたアール=グレイに半年かけて距離を縮めていって」
「ああしてですか」
「仲よくなってもらいます」
「そうですか」
「はい、そして」
そうであってというのだ。
「ボールも沢山ありますし」
「寂しくないですね」
「幸せになりました」
「それはよかったですね、実は私の実家は牧場で」
職員はアール=グレイ達を見つつ笑顔で応えた。
「ロバもいますが」
「そうなのですね」
「一匹別の牧場に譲ったのですが」
そうしたがというのだ。
「娘が可愛がっていて先日その子と再会しましたら」
「どうなりました?」
「娘に自分から駆け寄って親しくしました」
「そうでしたか」
「ロバはいい生きものですね」
「全くです、だから幸せになって欲しいですね」
「どの子も」
二人で話した、その二人の前では。
アール=グレイは三頭の友人とボールで遊んでいた、その姿にもう寂しさはなかった。彼はとても幸せそうだった。
ロバの幸せ 完
2025・3・23
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