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ワインの滲み

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第一章

                ワインの滲み
 山口県で世界的企業である八条グループの系列県内では結構有名で業績もいいそれを受け継いだ山本康友はワイン好きである、それでよく飲んでいるが。
「一つ注意しないといけないんだよね」
「飲み過ぎ注意ですね」
 秘書の市川保志が応えた、山本は一七八位の背で黒髪を真ん中に分けた面長の顔で切れ長の目が目立つ。かなり痩せている。市川は卵型の顔で優しい顔立ちをしていて黒髪はショートであり一七五程の背ですらりとしている、二人共今は会社にいるのでスーツだ。尚二人共まだ二十代で市川の方が一つ下である。実に仲よく連携し合って仕事をしている。
「やはり」
「それとだよ」
「では二つですね」
「うん、僕の言い間違いだよ」
 山本はそのことを素直に認めた。
「ワインはこぼすとね」
「滲みになりますね」
「それがね」
 このことがというのだ。
「困るね」
「赤ワインは、ですね」
「赤も白も好きだけれど」
「ロゼもですね」
「それで赤もよく飲むけれど」 
 それでもというのだ。
「その赤ワインを零すと」
「滲みになるので」
「困るね」
「一番いい解決案ですが」
 市川は無表情で述べた。
「飲まないことです」
「それだね、しかし僕は好きなんだよ」
「ワインが」
「煙草もギャンブルも女性で遊ぶこともしないけれど」
 それでもというのだ。
「日課の水泳とね」
「ワインは欠かせないですね」
「そうだよ、それで今度親会社の社長さんが来られるね」
「接待ですね」
「山口のそれもこの下関で接待となると」
 山本は社長室の窓から自分達の会社がある下関の街並みを見て言った、六階建てのビル全て彼の経営する会社のものである。
「やはりあれだね」
「河豚ですね」
「オーソドックスと言われても」
「やはり下関は河豚です」
「じゃあ河豚の美味しいお店で設定させてもらおう」
「八条グループの」
「こうした時グループは有り難いね」
 系列店で色々便宜が利くからだ。 
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