ハッピークローバー
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第百六十二話 メイド喫茶に入ってその八
「同じ温帯でもね」
「地理ですと」
「もうね」
「全く違うんですね」
「これがね」
「そうですか」
「日本は暖かくて」
そうであってというのだ。
「過ごしやすいのよ」
「そうですか」
「けれどイギリスはね」
同じ温帯でもというのだ。
「北海道よりも寒くて」
「暮らしにくいですか」
「冬は凄いわよ」
真顔で言った。
「その寒さたるや」
「北海道よりもなんですね」
「寒いのよ」
「そうですか」
「だからね」
そうであるからだというのだ。
「日本にいるとね」
「過ごしやすいですか」
「そうよ」
こう言うのだった。
「何度も言うけれど」
「そうですか」
「イギリスは西岸海洋性気候で」
「日本は温暖湿潤気候ですね」
「そうした区分があっても」
それでもというのだ、先生は富美子に自分が生まれたイギリスの雨と寒さを思い出しつつ話していった。
「全く違うわよ」
「過ごしにくいですか」
「ええ、お水の質もね」
これもというのだ。
「違うしね」
「少なくて」
「それでね」
そうであってというのだ。
「日本にいていいと思うわ」
「そうですか」
「勿論イギリスは好きよ」
生まれた国はというのだ。
「愛しているわ」
「祖国だからですね」
「生まれ育った国を愛するのは」
それはというと。
「当然でしょ」
「普通のことですね」
「だからね」
その為にというのだ。
「イギリスは好きよ、けれど日本もね」
「お好きですか」
「第二の祖国よ」
そうだというのだ。
「もうね」
「そうですか」
「ずっといたいわ、それにね」
「それに?」
「先生今度結婚するから」
「そうなんですか」
越智は先生のその言葉に目を丸くさせて応えた。
「先生今度」
「ええ、結婚するのよ」
「そうなんですね」
「日本の人とね」
「それじゃあ」
「そう、もうね」
これからはというのだ。
「日本で暮らすわ」
「永住されますか」
「そうするわ」
こう言うのだった。
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