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腕はいいラーメン屋

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第一章

                腕はいいラーメン屋
 的場露伴卵型の顔にインコを思わせる顔で黒髪を短くした長身痩躯の彼はあるラーメン屋でアルバイトをしつつ大学に通っているが。
 店長の蜂須賀万太郎、黒く大きな鉤爪型の眉に小さな鋭い目にヒトデの様な癖のある黒髪の一七〇程の背のややがっしりした体格の彼にだ、よくこう言っていた。
「店長さんはもうラーメンを作って」
「それに専念しろってのかよ」
「腕はいいんですよ」 
 肝心のそれはというのだ。
「もうそれは」
「当たり前だ、俺はコンクールに出たら毎回優勝してな」
 蜂須賀は的場に店の閉店後に掃除をしつつ強い声で言い切った。
「誰が食ってもだよ」
「美味いって言ってくれますね」
「そうしたな」
 まさにというのだ。
「世界一のだよ」
「ラーメン職人ですね」
「才能があってな」 
 美味いラーメンを作るというのだ。
「努力を欠かしていないつもりだ」
「そうですよね」
「天才が常に努力しているんだぞ」
「モーツァルトみたいに」
「おう、俺はラーメン界のモーツァルトだ」
「モーツァルトって音楽全振りだったんですよ」 
 的場は強い声で言う蜂須賀に話した。
「これが」
「生活とか酷かったんだってな」
「はい、あの人は」
「それで俺もか」
「口が悪いんですよ」
 彼のそこを言うのだった。
「どうにも」
「そうなんだな」
「遠慮なくずけずけと言いますし」
 人が気にしている様なことでもというのだ。
「荒っぽい口調ですから」
「問題だってんだな」
「はい」
 まさにというのだ。
「そうですから」
「接客向きじゃねえか」
「小さな子は特にこだわりますよ」
「ラーメン屋にはお子さんもよく来るしな」
「それでお子さん怖がらせたら」
 そうすればというのだ。
「駄目ですから」
「それでか」
「はい、もうです」
 それこそというのだ。
「店長はラーメンに専念して」
「接客とかは店員の的場君達がか」
「やっていいですか?」
「ああ、そう言うならやってみろ」
 的場も反対しなかった。
「その方がいいならな」
「それじゃあ」
「俺もな」 
 的場自身もというのだ。
「ラーメンに専念出来たらな」
「いいですね」
「ああ」
 そうだというのだ。
「その方がな」
「それじゃあ」
「それとな」 
 さらに言うのだった。
「変な客が来たらな」
「ヤクザ屋さんとかですね」
「半グレとかな」
 そうした所謂アウトローの者達がというのだ。
 
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