だからってなんだよー 私は負けない
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3-8
次の日の朝 9時 兄弟が迎えに来た。二人ともトレーニングウェアに長靴姿。貫一兄ちゃんは長い枝切鋏を持っていた。
「貫一兄ちゃん それっ」
「ああ ナナカマド そろそろ 良いだろう 高いとこも取れると思って」
「だねー 嬉しいなぁー そんなの採れるって思ってなかったからー」
「俺もせっかく手伝うのに すぐりの為になることしなきゃーな」
「チッ 兄貴 点数稼いでよーぉ」
「貫次 これはな 一日の長と言ってな それだけ 経験あるってことさー 柿を取った時のこと覚えてないかー? 二又の枝を作って」
「あーあー 小さい時 庄爺の空地で すぐりに取って食べさせてやった 懐かしいね」
「ふふっ 覚えている 私 おやつも無かったからー 貫一兄ちゃんが取ってくれて おいしかったわー 口の周りがぐしゃぐしゃになっていて 貫次が袖で拭いてくれていたの」
「お前 つまんないこと 覚えてるなぁー」
― ― ― ☆ ☆ ☆ ― ― ―
まだ青いけどイチョウ、紅葉に椿 ツインの葉っぱのものも ナナカマドの葉つきの半分赤い実 グミ 少しだけどゴンズイの実も それと、貫次がひかげかづらも集めてくれた。お昼前に収集を終えて、洗浄して、箱詰めも 3人なのですんなり終えていた。2時頃 篠田家に向かって、おじさんは、椎茸と白木くらげを用意してくれていた。
「これ出したら すぐりちゃん 寄ってくれ 細かい打ち合わせしたいんだ それと、今晩はウチで晩飯食って行けよー お母さんも帰り遅いんだろう?」
「はい 寄りますけどー ご飯はどーしょーかなー」
「いいじゃぁないか 愛の山と篠田食品の提携祝いだ これからな敦賀に買い出しに行ってくるよ 寿司もな 回転ずしのはま寿司で申し訳ないんだけど」
「わぁー お寿司・・・あんまり 食べたこと無い・・・」
「だろー 食べて行けよー」
「ありがとうございますぅー」
貫次と自転車で荷物を出しに行って、貫次が腹減ったというので、二人でコロッケとコーヒーを飲みながら
「なぁ この1か月の間にすぐりはずいぶんと変わったよなー 俺のち×ぽ握ったのは、この前なのになー」
「それを言うな! あの時は、魔が刺したんだかからー 二度とゆわんとってな!」
「わかってる ふたりだけの秘密だった でも、これが続くといいなぁー」
「うん 最初 貫次が居てくれたからー 感謝してるよ」
「だったらーっていうと 又 怒るんだろう?」
「当り前じゃー」
私は、いったん帰って、シャワーをして着替えてから夕方 篠田家に向かった。女の子らしくチェックのスカートにしたのだ。そして、今日 送ったものの納品書を清音さんにメールをしておいた。椎茸の件はもう昨日電話して伝えておいたのだ。
向こうのお家に行くと、おじさんは帰っていて、取引の細かい打ち合わせをして、ダイニングに呼ばれると、食卓には、刺身、お寿司とフルーツサラダが並んでいた。私には、見たこと無いような贅沢な料理に見えていた。
「そうだ 来週からは、ウチも原木のほうも出荷するし、大き目の箱があるから、それを使えばいいよ。配送伝票はすぐりちゃんが貼るんだろうけど、表の冷蔵庫に入れておけば、ヤマトが勝手に取りに来て持って行ってくれる。4時頃かなー。コンビニまで持って行く手間が亡くなるだろう。それに、ウチから出した方が幾らか安いと思うよ。月末〆の翌月末払いだ。料金の振り分けは紗栄子さんがやってくれるから・・・。すぐりちゃんに椎茸の分と一緒に請求書をまわすよ」
「この人は紗栄子さんのことお気に入りでね 食堂の時から通っているのよー それで、あの後 食堂を閉めるってなって ウチに呼んで、仕事に慣れたころから、経理以外の総務は全部紗栄子さんにやってもらってねー 昔のことだけど、食事でもって誘いをかけたみたいよー 断られたみたいだけど、本当のとこはどうだか怪しいわー」
「お前・・・すぐりちゃんとか子供達の前でなんてことを・・・」
「あらっ すぐりちゃんだって もう それなりのお年頃なんだから・・・お母さんがきれいでもてるって、わかってた方が良いわよねー でも、私も 紗栄子さんのことは好きよ! 明るいし、テキパキと仕事こなすしー 昔からね お金に苦労しているの知ってたから、なんとか手助けしようとしたんだけど、紗栄子さんはね すぐりちゃんの為にも、自分でなんとかしますって 頑張ってきたのよー」
「そーなんですか? ・・・」
「あっ 貫一 そこの小皿にすぐりちゃんのを取ってあげな 自分じゃぁ 遠慮して手を出しにくいだろうからー どんどん食べなさいよ」と、おじさんは気を使っていてくれた。
「親父 今日は ずいぶん 奮発したじゃぁないか」と、貫次が
「当り前だろう すぐりちゃんが良い話を持って来てくれたんだからー 普段 お前等 野郎だけだったら、握り飯を並べときゃー充分だろう?」
「それっ 差別か?」
「差別じゃぁなくって 区別だ! 男の子と女の子のな! すぐりちゃん 事業始めると、事務作業も大変だろう? お母さんに言って、ウチのパソコンも使っても良いぞー 何かとまとまったお金が必要になったら、投資しても良いんだぞー」
「ありがとうございます でも 投資だなんて・・・」私は、お母さんが借金で苦労しているのを知っていたから、とんでもないと思っていたのだ。
と、帰りには「お母さんに持って帰りなさい」と、パックに詰めたものを渡されて、兄弟ふたりに家まで送ってもらったのだ。
この数日間の経験。振り返って、全て、先生のお陰と感謝していた。耀ちゃん・・・。
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