アリスマエストロ
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第三章
「そして当たっても」
「運がいいって」
「そう思ってだよ」
そのうえでというのだ。
「落ち着いていよう」
「わかったわ」
アリスは兎の言葉に頷きました、そうしてです。
カードを取って発表を待ちますと。
発表された数字と自分のカードを見てです、アリスは驚きました。
「あら、私よ」
「そうなのか」
「まさかだな」
「いや、アリス嬢が当たるとは」
「これは意外だよ」
「驚いたよ」
兎もハンプティダンプティも芋虫もチェシャ猫もドードー鳥も言います。
「これはまた」
「しかし当たったのなら」
「それならな」
「指揮を執らねばならない」
「それが決まりなのだから」
「では宜しく頼む」
王様もアリスに言います。
「これからな」
「はじめてでも心配することはないわ」
女王の声は優しいものでした。
「誰もが最初のことはあるし」
「やりはじめですね」
「その通りだよ」
「誰でもね」
今度は二人で言いました。
「失敗は恐れない」
「それにちゃんと教えて助けてくれる人がいるから」
「安心するのだ」
「貴女が恥をかくことはないわ」
「そう、心配無用だよ」
兎もアリスに言います。
「今回のことも」
「そうなのね」
「そう、だから」
それでというのです。
「落ち着いてだよ」
「指揮者のボックスに入ればいいのね」
「そうだよ、行って来るんだ」
「それじゃあね」
アリスは兎の言葉に頷いてでした。
自分から当たったと会場スタッフの人に告げてでした。
指揮者の場所に案内してもらいました、そしてです。
スタッフの人にです、こう尋ねられました。
「どの曲を演奏されますか」
「そうですね」
アリスは少し考えてから答えました。
「この国の国歌を」
「国歌ですか」
「はい、それを」
こう言うのでした。
「そうさせて頂きます」
「それでは」
スタッフの人は頷きました、そしてアリスは指揮棒を手に取りまして。
指揮をはじめました、楽譜は何とか読めまして。
最後まで演奏しました、するとホールの皆から拍手を受けまして。
「よかったかしら」
「最後までね」
兎が答えました。
「よくやったよ」
「そう言ってくれるのね」
「最後までね」
「ええ、ただ私棒をね」
アリスは正直に言いました。
「指揮を執ったことないしどうしたらいいかね」
「わからないね」
「ただ音符を読みながら」
楽譜のというのです。
「棒を振っていただけよ」
「いや、実はね」
ハンプティダンプティが言ってきました。
「後ろに正規の指揮者がいるんだよ」
「そうなの」
「君は気付かなかったが」
それでもというのだ。
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