カピバラへの愛情
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第一章
カピバラへの愛情
テキサス州サンアントニオの動物病院でだ。
カピバラの赤ちゃんが生まれた、それを見てカピバラの飼育員であるホセ=カニオ茶色の癖のある髪の毛に黒い目と浅黒い肌を持つ中背で太った彼は言った。
「長かったな」
「二十五年振りでしたって」
「ああ、俺がここで働きはじめたのがな」
新入りの部下に話した。
「そのだよ」
「二十五年前ですね」
「その時に生まれてな」
そうしてというのだ。
「ずっとな」
「生まれていなかったですね」
「二十五年の間な」
「俺が生まれる前ですからね」
部下はしみじみとして言った。
「カピバラはそんなに生まれないとは思えないですが」
「それでも生まれない時はな」
「生まれないんですね」
「そうだよ」
実際にというのだ。
「これがな」
「生まれるのも縁ですね」
「ああ、それでな」
そうであってというのだ。
「ずっとだよ」
「生まれていなくて」
「ようやくな」
二十五年振りにというのだ。
「生まれてな」
「それでか」
「ああ、これからな」
カニオはさらに言った。
「どんどんな」
「生まれて欲しいですね」
「その二十五年分な」
部下に笑って話した、そしてそのカピバラの赤子トゥビと名付けた彼を大事に育てはじめたがその彼にだ。
親や一緒に暮らしているカピバラに飼育員達だけでなくだ。
「カア」
「チッ?」
「あれっ、烏が」
部下はトゥビに烏が来たのを見て言った。
「近寄ってきました」
「烏はカピバラ襲わないからいいさ」
カニオは平気な顔で言った。
「別にな」
「それはそうですね」
「悪戯をしてもな」
烏は個体によってはよくするがというのだ。
「そうしたら周りの子達が追っ払ってくれるし」
「別にいいですか」
「ああ」
特にというのだ。
「だからな」
「気にしなくていいですね」
「別にな」
「それじゃあ」
部下も頷いた、だが。
その烏を見てだ、部下は言った。
「トゥビの前にです」
「パン屑置いたな」
「何処かで拾ってきたんですね」
「あれはな」
カニオはその光景を見て言った。
「餌をあげてるな」
「プレゼントですね」
「ああ」
まさにというのだ。
「そうだな、そしてな」
「何か距離近付けてますね」
「あの烏どうもな」
カニオはさらに言った。
「トゥビが気に入ったみたいだな」
「烏がカピバラをですね」
「烏は育児熱心だろ」
「そういう鳥ですね」
「愛情深いんだ、それでな」
そうした生きものであってというのだ。
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