| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

仮面ライダータオ

作者:地水
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

破:守れ、未来の希望!

 モールイマジンの襲撃から約一時間後。
山の麓にて待機していた大型車両型の移動基地・Gポーターにて尊は雨谷を連れて戻ってきた。
車内に入ると設備が整えられた内部にて、一人の女性が待っていた。

「お帰りなさい、尊さん」

「おぉ、有瀬。サンキューな」

出迎えてくれたのは腰まで伸ばした山吹色の長髪と黄金色の瞳が特徴的な眼鏡をかけた女性。
彼女――『有瀬愛依(ありせ・めい)』は笑顔で尊達を迎えると、数人分のココアを差し出した。
雨谷は受け取ったココアの入ったマグカップを手にすると、グイっと飲み始める。

「んぐっ、んぐっ……はぁ~、美味しい」

「おいおい、そんなに急いで飲むと咳き込むぞ?」

「ああ、すいません。なにせあんな目に遭ったんです。例えココア一つでも普段のありがたみをしみじみとかんじてしまって……ぐすっ」

美味しそうにココアを飲み、その温かさに涙ぐむ雨谷。
当たり前のことに感動している彼に尊は呆れた表情で頬を指でかいていた。

「だからって泣くことはないだろ……」

「いやいや、怪人に襲われた後に助かり、平穏のありがたみを身に染みて泣くってこともありますよ」

「そういうものなんか……って!?」

愛依でも雨谷でもない第三者の声を耳にして尊は振り向くと、そこにいたのは先程雨谷を助けた少年・龍李の姿があった。
龍李は愛依からもらったであろうマグカップに入ったココアを啜り、甘さと温かさを堪能していた。

「いやぁ、当たり前なこのおいしさが美味いんですよね」

「おまっ、ついてきてたのか?」

「当然ですよ。不動先輩を手伝うことが今回のオレのするべきことなんですから!」

驚いてる尊に対して龍李は自信満々にそう言い切った。
そもそもこの少年は一体何者なのか、そう思った尊は龍李に訊ねはじめる。

「おい、改めて聞くがお前は誰なんだ? 助けられたのはありがたいけども」

「押忍! 自己紹介します! オレの名前は小桜龍李! この度ガーディアンライダーズに協力者として尊先輩の応援にやってきました」

「応援? 年が若いのは気になるが、それはまあいいとして……」

元気はつらつとした礼儀正しい態度で挨拶をされて尊は度肝を抜かれる。
自分と同じ"ライダー"と名乗ってはおり、年はどうみても自分よりは若い。
とはいっても、実力と適正さえあれば20歳未満の若者でも変身できれば"仮面ライダー"としてなれるため、年が若いことに関してはさして問題ではないのだが。
問い詰めるつもりが勢いを削がれた尊だが、助け舟を出すように愛依が切り出した。

「今回の怪人が何を目的か調べるために、情報を整理しましょうか」

「押忍!お願いします!有瀬先輩!」

「って、お前が仕切るのかよ」

頭を勢い良く下げ頼み込む龍李に、尊はツッコミを入れる。
そんな二人のやりとりを愛依は苦笑しながら手に持ったタブレット型情報端末を操作し、立体映像として空中に映し出される。

「今回の被害者は雨谷壮一、将来の食糧問題に挑む研究者で、既にいくつもの実績を重ねています」

「なんか自分の事をこういうふうに説明されるとむず痒いですね」

「最近はさらなる食糧問題解決を目指して、新しい研究を完成されたそうですね」

愛依の言葉を聞いて、先程まで照れていた顔が強張る。
両腕で大切そうに抱え込んでいるジェラルミンケースをいっそう抱きしめ、それに気づいた龍李が訊ねた。

「雨谷さん、そのケースって……」

「大切な研究成果です。これを発表すればもう少しは食べ物で苦しむ人々をなんとかできるんです」

「あーつまりあれか。あのモグラのイマジンたちはそいつを狙ってきたってことか」

尊の言葉の示す通り、モールイマジンたちの目的は恐らく『雨谷の作った研究成果』。
何の目的で研究成果をイマジンたちが狙っているのかは謎だが、人類のためにもなる研究を渡すわけにはいかない。
そう思った尊は雨谷に対して元気づける様に声をかける。

「あんたがこれを作り上げるのはよっぽど大変だったんだよな。その想いも含めて、俺が守ってやる」

「ら、ライダーさん……」

自信あふれる笑みを雨谷に向けて、勇気づけていく尊。
人類の自由と平和のために戦う『仮面ライダー』の一人として、彼と彼が紡ぐ未来を守る。
心のうちでそう思っていると、次に龍李が口を開く。

「そうっすよ雨谷さん。あんたはオレ達ライダーが守るっすよ!」

「おいおい……お前も戦うってのか?」

「押忍! これでもオレ、ライダーの一端ですから!!」

「冗談言うな、こんな若いライダーがいてたまるか!」

「そんなっ!? 冗談じゃないっすよ! ちゃんと変身ベルトもありますよ!」

「あー、わーった、わーったから」

こんな若い少年がライダーであることを信じようとしない尊と、真剣に講義をする龍李。
二人のやりとりに苦笑いを受かべ、愛依が何かを告げようとした途端……。
突如、Gポーター車内にて警戒アラームが鳴り響いた。

「「「っ!!!」」」

「な、なんですかぁ!?」

「奴さんの登場ってわけか!」

聞きなれない警戒アラームに驚く雨谷を他所に、尊は何かがやってきたことを察する。
すぐさま愛依が端末を操作し、外部の状況をモニターに映す。
そこに映し出されたのは、多数のモールイマジンたちと、先頭に立つ一体の怪人。
炎で覆われた黒い身体の怪人はニヤリと不敵な笑みを向けて、モールイマジン達に指示を出して差し向けてきた。

『『『ハッハー!』』』

「多くのイマジン達がGポーラーに向かってきます! 迎撃を!」

「出番か! 有瀬、サポート任せた! 俺が外に出る!」

「んじゃオレも!」

「お前は雨谷さんを守っとけ!」

自分も行こうとする龍李に叱咤すると、尊は一人車内から出ていく。
やれやれと言いたげな感じで頭を掻きながら、龍李は不安そうにしている雨谷へ声をかける。

「大丈夫ですよ、雨谷さん。ここは尊先輩の事を信じましょう!」

「うむむ……そりゃ信じたいですが」

「まあ、ここはどしっと構えておきましょうよ!」

揺るがない自信を抱えて龍李は雨谷の隣に座り込んだ。
そんな二人のやりとりに、オペレートの片手間に見ていた愛依はくすりと笑いをこらえていた。


~~~~~


人気のない道路を法定速度を無視して走るGポーター。
その背後からは何体にも及ぶモールイマジン達が迫っていた。
その一体が車体に取りつき、内部へ乗り込もうとする。

「はっはっは! 俺が一番乗りだぁ!!」

「―――させるわけねえだろ! 変、身!」

【拳・魂・一・擲! アイアンフィスト!】

「はへっ?ぶばぁ!?」

次の瞬間、いくつものホログラフ状の装甲パーツが飛んできてモールイマジン達を弾き飛ばす。
やがて一カ所に集まり姿を現したアイアンライダーがGポーターの屋根の上で言い放った。

「悪いな。こいつはガーディアンライダーズ本部行きだ。このままだと俺を始めとしたライダー達がお前たちをおもてなしするぜ」

「チッ! ライダーか!? 電王でもないくせにしゃしゃり出るんじゃねえ!!」

「でんお……たっく、何処の怪人も戦う相手にえり好みすんじゃねえ!」

自分の知りえない"時の守護者"の名前に戸惑いながらも、Gポーターに取りつこうとするモールイマジンを叩き落としていくアイアンライダー。
最初は使途空拳による蹴りや拳で対応していたが、増えてくる数によって次第に対応しきれなくなり、厄介だなと思ったアイアンライダーはアイアンドライバーのギア部分に触れる。

「面倒極まりないな……」

『尊さん、チェンソーの力なら殲滅能力に長けています!』

「アドバイスサンキュー有瀬!それじゃあ一気にかたずける!」

【鉄・魂・創・作! チェーンソーフィスト!】

アイアンライダーが触れた"電動のこぎり"のホログラフが左腕に取りつき、丸ノコを模した武装・チェンソーフィストとして装着される。
刃部分が金属音と共に回転し始め、光の刃を灯したチェーンソーフィストを思いっ切り振り放つ。

「八つ裂け、アイアンリングスラッシュ!!」

勢いよく放たれた光輪・アイアンリングスラッシュはモールイマジン目掛けて飛んでいき、その身体を一刀両断していく。
なすすべなく多数のモールイマジンたちが撃破される光景を見て、余裕綽々な笑みを仮面の下にて浮かべる。

「どうよ、引き出しの多い男だろ? 俺って」

「「「ハッハー!!!」」」

「って、嘘だろ?まだいるのか!?」

巻き起こった爆炎の中から新たなるモールイマジンたちが現れ、その姿に驚くアイアンライダー。
モールイマジン達は車体の屋根に降り立ち、アイアンライダーへと襲い掛かっていた。


~~~~~


Gポーター車内、繰り広げられる外での戦闘の様子が音を通じて嫌でもわかり、雨谷は不安そうな表情を浮かべる。

「ひぃ、大丈夫なんだろうか」

「大丈夫ですよ。外の怪人達はアイアンライダーがなんとかしてくれてます」

「そうですよね、ライダーなら……」

オペレーターとして戦況を見据えながら元気づけてくる愛依の言葉を聞いて、雨谷は一旦気を持ちなおす。
このまま東京方面に存在する『ガーディアンライダーズの本部』に辿り着けば怪人達に追いかけられることはない。
そう安心しきっていると、雨谷の視界に一瞬『おかしなもの』が見えた。


「えっ……」


―――それは、刃だった。
正確には物陰から伸びる剣、本来なら影しかないはずの空間から這い出てきた。
影の中からその剣は真っ直ぐ雨谷へと向かい、そして……。


「ちょーっとまったぁ!チェストォォォォ!!」


―――バキィン


雨谷へと深々と刺し貫く前に、頭上から降ってきた龍李によって圧し折られた。
龍李の繰り出した肘鉄によって刀身は思いっきり砕かれ、その余波で影に潜んでいたものが中から出てきた。
炎で覆われた黒い身体の怪人――『ファントム・ヘルハウンド』は龍李の登場に驚く。

「貴様、どこから!?」

「天井に張り付いていた! 外のイマジン達がただ無策に突っ込んでくるわけじゃない、お前のようなやつのために控えてたんだよ!」

「ち、小癪なぁ!」

ヘルハウンドは負け惜しみとして口から炎を吐き出そうとする。
だがそれよりも前に龍李の繰り出した掌底が顎に当たり、不発に終わってしまう。

「ぐはっ」

「有瀬先輩! お願いします!」

「はい!強制射出!」

龍李の叫びと共に有瀬はコンソールを操作すると、車内の出入り口が一人勝手に開いた。
龍李はヘルハウンドを掴み上げると、そのまま出入り口目掛けて飛び込んだ。

「どっせぇぇぃい!」

「ぬおおおおおお!??」

Gポーターから身を投げ出した龍李とヘルハウンド。
ヘルハウンドはとっさに龍李を蹴り飛ばし、何とか離れて硬い道路へと不時着。
対して龍李は空中で回転しながらうまく着地すると、ニヤリと口角を上げる。
そしてどこからか取り出した羅針盤型のバックル・タオベルトを腰に装着。
右手を握り拳にして左手の平手に叩き込むように合わせて、構えながら大きく叫ぶ。

「これで誰も巻き込まずに戦える! いくぜ!」

【Rider Redy】

「変身!!」

【Set Up】

静かな口調の電子音声と共にタオベルトの中央から太極図の紋章が浮かび上がりながら目の前に出現。
等身大の龍李ほどの太極図は彼の目の前で回転し始め、その時に起こった黄金色の旋風が吹き溢れる。
龍李が旋風に包まれると彼の姿が変わっていく。
黄色の基調としたボディ、黒と白であしらった軽装のアーマー、複眼を持った赤い双眼、麒麟を模した一本角のマスク。
仮面の闘士へと姿を変えた龍李は、その姿の名を高らかに名乗り上げる。


「仮面ライダータオ、我が往く道を通させてもらう!」


龍李の変身した仮面の闘士……『仮面ライダータオ』は高らかに宣言すると、ヘルハウンドへと飛びかかっていった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧