仮面ライダーディネクト その男、世界の継承者
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中編:世界の継承者
宮城県某所、山脈地帯。
そこに人知れず活動を続けている場所があった。
大ショッカーの隠された拠点がそこにはあり、怪人達によって多くの人々が捕らわれ、強制労働をさせられていた。
ショッカーの戦闘員である"骨戦闘員"と呼ばれる黒装束の集団が鞭を持ち、連れ去った町の人々に指示を飛ばしていた。
「イー! おら、そこ、さっさと運べ!」
「燃料は限りあるんだ! 貴重に運べ! イー!」
鞭を振って怒鳴り声をショッカー戦闘員に、捕まった人々は恐怖していた。
そんな中、一人の女性が地面へと倒れこんだ。
辛そうに咳き込む女性を見て他の人々は心配そうに駆け寄るが、それ目撃したショッカー戦闘員は激高した。
「貴様、誰が休んでいいといったぁ!!」
「……ッ!!」
ショッカー戦闘員が振るった鞭の先端が女性に飛んでいく。
女性は痛みに耐えようと咄嗟に目をつぶり、身構える……だが、いつまで経っても痛みはやってこない。
恐る恐る目を開けると、倒れこんでいる自分の前に一人の青年が悠然と立っているのが見えた。
その青年――ハルマは剣でショッカー戦闘員の鞭を絡めとると、軽口をたたきながらニヤリと笑う。
「おいおい、女性を狙うのは可哀そうだろ?」
「なっ!?」
「おらっ! 地面へとキスだ……受け取りなッ!」
「イーッッ!?」
絡めとった鞭を無理やり引っ張り、近づいて飛んできた所へハルマの横蹴りを顔面へと思いっきり叩き込む。
蹴り飛ばされたショッカー戦闘員は目にもとまらぬ速さで飛んで行き、他の戦闘員をも巻き込んで地面へと倒れこんで気絶した。
自分達を支配していたショッカー戦闘員を一瞬で倒し、突如現れた救世主に騒然とする一同。
その救世主であるハルマは町の人々を一瞥すると、大声で訊ねた。
「すいませーん! この中に小野寺って人いますか?」
「小野寺なら、私ですが……」
「ああ、君が小野寺カナエさんで合ってるかな?」
ハルマが助けた女性――小野寺カナエはそう答えると、彼に助け起こされる。
そうして強制労働をさせられていた町の人たちを集めていく。
やがて全員が集め終わったとき、何処からともなくツバキが現れ、ハルマに報告する。
「ハルマ!すぐに大ショッカーの怪人達がこっちへ来るよ!」
「おーし、わかった。ツバキ、お前は彼らの避難誘導を頼む。怪人相手は俺の専売特許だ」
「わかった、無理しないでよね!」
「へっ、だーれに言ってんだ? 任せろよ」
自信ありげな笑みを向けながら、ハルマはツバキにカナエ達一般人を託す。
ツバキが町の人々に避難誘導をしている中、カナエがハルマに訊ねた。
「あの、なんで私たちを助けてくれた……」
「カナエさん、君の弟さんに助けてほしそうでね。彼の絵を代わりにもらう代わりにここへ殴り込んだんだ」
「絵を描いている、弟……弟って、もしかして!」
ハルマの言葉を聞いて、カナエが思い当たったのはたった一人の弟の姿。
みんなから『ジャガイモ』と呼ばれ、絵が得意な弟……。
カナエがその名前を口にしようとした瞬間、こちらへ迫る足音が聞こえてきて、ハルマが急がせる。
「さぁ、いったいった! ツバキ、後は頼んだ!」
「うん、さぁカナエさん。こっち!」
「あっ!」
カナエはハルマに追及しようとするもツバキと共に後を去っていく。
たった一人残されたハルマの前に現れたのは、何十体をも大ショッカーの怪人達。
ショッカー怪人・ゲバコンドル。
デストロン怪人・タイホウバッファロー。
GOD神話怪人・サソリジェロニモ。
ゲドン・ヘビ獣人。
ブラックサタン・クワガタ奇械人。
ゴルゴム・クモ怪人。
フォッグ・ハチ女ズー。
そして、中心にいるのは強烈な殺気を放つ一体の怪人。
――クライシス帝国・グランザイラス。
迫りくる怪人達の目の前に本来なら誰しもが恐怖するであろう怪人軍団の登場。
だがしかし、それを見てもハルマは顔色一つ変えず、手に持った剣の切っ先を向けて訊ねた。
「よぉ、大ショッカー諸君。道理で生き残っているわけだ。まさかクライシスの隠し玉が率いているとはな」
『貴様、われらの事を知ってるとは何者だ!』
ハルマが口にした『クライシスの隠し玉=グランザイラス』と悟り、タイホウバッファローが叫んだ。
予想通りの反応を示したハルマは不敵な笑みを絶やさずに言葉を紡いでいく。
「大方、ライダーがいない世界に潜んで力をつけ、再び大ショッカーとして動くつもりだったんだろ? だけど、だけどもだ、そうは問屋が卸さねえよ」
『ええ、そこまでお見通しとは! もう一度問う、貴様何者だ!』
「――――通りすがりの仮面ライダー、といえばわかるかな?」
タイホウバッファローの言葉を聞いて、待ってましたと言わんばかりにハルマはあるものを取り出した。
その一枚のカード……ライダーカードを手に持った片刃の刀剣・ディネクトドライバーに備え付けられた装填口にスラッシュさせる。
カードに内包された【力】を読み込み、電子音声が鳴り響いた。
【KAMEN-RIDE…DENNECT!】
「変身」
電子音声が鳴り響いた後、ハルマの周囲を取り囲むように現れたのはカード型の幻影。
まるで回転式のアニメのように展開されるそれらはハルマの姿を人ならざる姿へと変えていく。
やがて変身を終えるようにディネクトドライバーで一閃すると、砕かれたカードがライドプレートと呼ばれる板状のパーツへと変換され、ハルマが変化した仮面の戦士へと頭部へと突き刺さる。
灰色だったボディアーマーは黒と白の彩られたボディに彩られ、頭部は鳥の翼の意匠を持ったライドプレートに並び、真紅の複眼を持つ仮面が輝く。
――そこに現れたのは、一人の仮面の戦士。
『仮面ライダーディネクト』、世界の継承者と呼ばれる男が今ここに顕現した。
「さて、やるか」
愛剣・ディネクトドライバーを構えたディネクトの姿を見て、グランザイラスは驚いた。
まるでその姿は自分達が偶像として崇め、世界を繋ぐために利用したが紆余曲折の果てに大ショッカー壊滅へと追い込んだ"とある仮面ライダー"を彷彿とさせたからだ。
『ええい、【奴】の系譜か! いけぇ!』
『『キシャアアアア!!』』
タイホウバッファローの言葉と共に、襲い掛かる怪人達。
ゲバコンドル・クワガタ奇械人・クモ怪人・ハチ女ズーがその機動力とスピードを活かして一瞬で接敵、ディネクトへと襲撃をかける。
だがディネクトは冷静にディネクトドライバーを構えると、そのまま振りかざす。
「タァ! ヤァ! トォ!」
ディネクトドライバーから放たれた斬撃はゲバコンドルを的確に捉え、確実にダメージを与えていく。
クワガタ奇械人とハチ女ズーは負けじとそれぞれの得物を用いてディネクトへと攻撃を仕掛けようとするが、ディネクトの繰り出した剣撃によって簡単にいなされてしまう。
ゲバコンドルとクモ怪人が背後から襲い掛かるが、見切ったかのようにしゃがんで避けると、ディネクトは蹴りと拳をそれぞれお見舞いする。
4対1にもかかわらず、簡単にいなされていく怪人達。
そんな怪人達に対して、ディネクトは腰部に備え付けられたホルダーから一枚のカードを取り出し、ディネクトドライバーの装填口にスラッシュした。
【CALL-RIDE…X!】
「Xさん、あなたのお力、披露しますよ!」
電子音声が鳴り響いた後、襲い掛かろうとする怪人達を吹き飛ばすように現れたは、半透明な幻影として現れた一人の仮面ライダー。
――仮面ライダーX、深海開発用改造人間・カイゾーグでもある仮面ライダー。
先輩ライダーでもあるXの幻影を重なり合うと、ディネクトの体から噴き出すのは大量の火花。
まるで火を入れた回路のごとく燃え盛る炎と化す。
「いざ、――真空、地獄車ァァァァァ!」
ディネクトはゲバコンドルを体をつかみ、体を回転させる。
『ぐあ!?』
空中高く飛び上がり、クワガタ奇械人・クモ怪人・ハチ女ズーの頭頂部を土台に叩き付けまくる。
『がっ!?』
『なぁっ!?』
『ひぎゃぁ!?』
Xの必殺技の一つである『真空地獄車』を繰り出し、4体の怪人の撃破に成功するディネクト。
その光景を見て、驚いたのはかつてXライダーと交戦したことのあるサソリジェロニモだった。
『し、真空地獄車だと!? 貴様、なぜその技を使える!』
「継承てもらった。それ以外に何がある?」
戦斧を構えて襲い掛かるサソリジェロニモに対し、クールな口ぶりで返したディネクトは再びディネクトドライバーを手にして構える。
振り下ろされる戦斧の刃をよけ、すれ違いざまに切り付けていくディネクト。
だがその隙を狙って、サソリジェロニモを潜り抜けてやってきたヘビ獣人がその長い体を駆使して拘束しようと図る。
『ライダー! これでは身動きできまい!』
「そうかな? なら、ちょいと我慢比べに付き合ってくれ!」
【CALL-RIDE…SABER! SLASH!】
ヘビ獣人によって拘束されようとする直前、ディネクトは二枚のカードを読み込んだ。
そのあとヘビ獣人によって拘束されてしまう……だが、苦痛の音を上げたのはヘビ獣人の方だった。
『ぐああああああああ!? な、何だこの熱さは!? 焼ける!? 俺の体がぁぁぁぁ!!』
「――そりゃそうだ。かつて、全てを滅ぼすほどの偉大な力を手にした神獣が吐く炎だからな」
突如炎によって燃え上がるヘビ獣人、その中から現れたのは"もう一本の剣"を携えたディネクトだった。
ディネクトが持つその両刃の剣、―――世界を守る炎の剣士・仮面ライダーセイバーが持つ"火炎剣烈火"を手にし、ディネクト自身はサソリジェロニモを見据える。
「いくぜ、ディネクト流・火炎十字斬!!」
『『ぬおおおおおおおおおお!?』』
ディネクトドライバーと火炎剣烈火、二刀流となったディネクトは一気に踏み出し、サソリジェロニモとヘビ獣人目掛けて必殺の一撃を叩き込む。
灼熱の炎を宿した2つの剣による斬撃『火炎十字斬』により、サソリジェロニモとヘビ獣人は炎に焼かれて撃破された。
残されたのはタイホウバッファローと、グランザイラス。
2体の強力な怪人と相対したディネクトは顔を向けて声をかけた。
「次はアンタたちだぜ?」
『く、われら怪人を糸も容易く倒しおって! こうなれば……グランザイラス、貴様にあれを任せた』
仲間である怪人達を怒るタイホウバッファローはグランザイラスをディネクトの頼むと前に出て、自身の武装を構える。
今回の敵は仮面ライダー……いくら相手が一人だろうと、油断は絶対できない。
そう思ったタイホウバッファローに今まで【アレ】を使う事を決めた。
相手は仮面ライダー、怪人達を屠った実力派目の前で明らかにしてくれた。
隠し玉であるグランザイラスを以てしても全力で……タイホウバッファローは自身の両肩の砲門をディネクトへと狙う。
火を吹き、放たれた砲弾はディネクトへと飛んでいくが、ディネクトは一瞬のうちに断ち斬り、切り落とされて後方へと着弾。
ディネクトの背後を爆炎を巻き上げる中、彼はグランザイラスへと刃を向ける。
「何を企んでるのかは知らんが、どうせお前達のことだ。面倒事をやる気なんだろ?」
『……グルルル』
「聞く耳持たずか、だが俺は最初に言ったぜ? そうは問屋が卸さないってな!」
ディネクトとグランザイラス。
二人が持つ刃が互いの首を切り落とさんと、地面を蹴りあげて、ぶつかり合った。
同じ頃、大ショッカー秘密基地・最深部。
そこにたどり着いたのは、タイホウバッファロー……ディネクトの相手をグランザイラスへと任せ、自分は【隠し球】を取りに来た。
パネルを操作し、自動ハッチを開けると……そこにいたのは、横たわる鋼鉄の巨躯。
町の人間を拐ってまで完成にこぎ着けた【それ】をタイホウバッファローは乗り込んだ。
――決戦の時は近い。
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