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外道戦記ワーストSEED

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十二話 夜の双翼(後編)

 
前書き
ビームサーベルの件については、本編・外伝・映画等で描写が一定しないため、このような表現になっております。

また、本編は正式採用機体をGAT-X100番代としているため、それ以前の番号は全て試作機です。 

 
重力下で立って歩く。

殆どの人が二本の足で無意識に行っている事が、ロボットには至極難しい。

この世界で、最初自分はそれを理解出来なかった。

結果、自分は実際にモビルスーツに乗り、運転のさなか何度も転倒する事でそれを痛感する事になる。

とまあ、長々書いたが、結論から言えば、標準的なナチュラルの操縦技術では、二本足で歩くタイプのモビルスーツを動かせば、重力のない宇宙戦でもよちよち歩き、地上戦及び重力発生が起こるコロニー内ではコケまくりとお話にならない。

そのため、今、連邦では、ハルバートン少将を中心とした連邦製モビルスーツのひな形の作成、および量産型の機体の選定のために、『2つの計画』を同時進行している。

1つ目、地球連合及びオーブの企業が協力し、オーブのコロニーヘリオポリスにて量産機に繋がる、最新技術を盛り込んだ複数の機体、現状予定しているプランでは基本型・白兵戦型、砲戦型、奇襲型、機動戦強襲型、換装遊撃型を一から作り、完成させる『メイン計画』、通称GAT『Gressorial Armament Tactical(歩行型戦術兵装)』計画。

2つ目、1つ目の計画の発覚を遅らせるため、デコイとして地球にほど近い世界樹コロニー跡地に『大西洋連邦の死神』を中心とした部隊を展開。

上記の大西洋連邦&オーブのモルゲンレーテ社の考案するG計画の進行中、考案され、実機での検証を行うに足る優秀な試作機のみを実際に建造。

コロニーに配備し、直接ジンに対しぶつけてみる実践を伴う実験計画、通称『TEA『Trial Enemy Armament(対敵性兵装試験)』計画』

この二本の柱を回すことで、短期間で完成を目指すのが地球連合の虎の子の作戦なのだが……

「やっぱ、一番の問題はOSだな。バッテリーの持ちなども問題だが、OSの完成度に比べれば些細な問題だ。というか、何割だ現状。完成度とすれば」

「……甘く見積もって二割ですね。というか、そもそも『ズル』しているジョン様ぐらいしかナチュラルでは十全に動かせない現状、現実的な観点で集団運用するなら、この部隊のようにやる気のあるコーディネーター連れてきた方が良いかと」

イヴの率直な言葉に、苦笑しながら返した。

「妥当な感想だが、ズルと言われると語弊があるな。あと、大本営のオーダーを考えると、ナチュラルには無理です、の答えは返せないだろ。その為に注力してる人員と金銭を考えれば、なおさらな」

ニュータイプ、という概念を完全に理解することは、ひじょーに難しい。

実際、画面上で別世界の高レベルニュータイプを閲覧し、自身も低レベルながら『そう』なったジョン大佐も、これをどう表現すれば良いのか未だに言いあぐねている。

ただ、末端ながらそうなった自身に起こったことを羅列すると。

『機体の操作法、バランス感覚の取り方などが説明できないが感覚的に理解できてしまい、操縦席で操作器具に触れた瞬間、それを現実にできる。新規機体に乗り換えた際も、ニュータイプ以外の者より短期間で、自分の身体を動かすのと同じ感覚で操作可能』

『相手がどう動くのかが朧気ながら理解でき、近接、遠距離共に相手の動きに対し、事前に対応できる。特に敵意、悪意を持った攻撃は数秒前に悪寒にも似た何かが頭に走り、何処に撃たれるのか分かってしまう』

サイクロプスで爆裂する機体が光の華を咲かせた中で、脳に異常な負担がかかり昏倒したあの日から、ジョンの脳はモビルスーツに乗ったとき、そういった一種の第六感を用いた運用を可能としていた。

なお、ジョンには預かり知らぬ事だが、彼の身におきた事は高レベルニュータイプに触れた精神が強制的に低レベルのニュータイプの領域まで引き上げられた現象であり、高レベルのニュータイプは、もっと『物理的制約』を無視した運用を可能とする。

閑話休題

「さて、俺のハーレムに会う前に仕事しねえとな。ただでさえ肩身狭いんだ」

全く笑ってない顔で、ため息混じりに自嘲しながら言うジョンに、イヴがニヤニヤしながら返す。

「まあ、ようやく観念しました?」

口に手を当て、からかうイヴに

「いや、諦めてる」

全く笑ってない顔で、ジョンは返した。

「さて、OSのブラッシュアップは前回同様、他の皆のモーションログを送りつけりゃ良い。俺達のログを送っても、『動きに至る思考が理解できない』と、返されるだけだしね。まずはハードを完成させよう」

一つ両手を合わせて叩いて、下らない話を中座する。

ベルトのポーチから個人端末を起動、テキストページを開くと同時に音声アプリも立ち上げる。

音声を自動筆記するソフトで、今から機体を実際に動かした時の要点を送るためだ。

「GAT-X004 ナイトイーグル、武装は両肩の試作ビームサーベル『グラム』、両腰の試作ビームバスター『ミスティック・バレット』、対ビームシールドを基本装備」

武装の簡易説明の後は、本作戦のキモである実際の兵装使用結果の報告だ。

「ミスティック・バレット試射5回、多角度からジンに対しビームの射出などを数度行ったが、全て貫通。威力は申し分ないがエネルギーの早期枯渇が課題。フェイズシフトと同時併用の為には、バッテリー改良に加え、放出威力のコントロールも推奨」

続いては、ビームサーベルの品評だ。

「両肩のビームサーベルの出力による威力や現象の変化を、基地内で担当エンジニア監督の元、互いに打ち合わせる行為も含め確認した結果、ミラージュコロイド粒子の収束具合が互いに薄い場合のみ、互いにすり抜けて奥の物体に当たってしまう事例が多々見られた。相手方が同様の装備を装着していた場合非常に危険な現象である。正確にその現象が起こる収束率を調べ、相手のサーベルを防御できる出力で起動できるよう調整してほしい」

まあ、新機軸の兵器だ。ある程度のイレギュラーは発生する。

問題点を口にしたあと、マイクをイヴに向ける。

やや長くした髪をかき上げながら、イヴも寸評する。

「まず、こちらのファジーな要望に答え、GAT-X005ガンダムアルバトロスを組んで頂いた技術者に感謝を。メビウス・ゼロから頂いたガンバレルは、問題なく使用できています」

当然の話、ニュータイプ研究所みたいな研究所が無い以上、我々のようなイレギュラーや、この世界では『空間把握能力者』と呼ばれる特殊な感性な人間に適した兵器は本当に少ない。

サブ計画の運用兵器、しかも人を選ぶ武器を突貫工事で、モビルスーツにつけて頂いただけでも御の字である。

「メインウェポン、ガンバレル『アラクネ』は事前充電分の4本ビットに充電された2発分のエネルギーはトラブルなく射出完了……ですがフェイズシフトを維持しつつ再充電は全ビット一発分、計4発分を貯めるだけで5分、これでは運用が難しいため、外部バッテリー併用含め、対策願います」

彼女はあえて言わなかったが、充電中に護身用で持たされている両腰のビームサーベルを起動してしまえば、更に充電時間は伸びる。

なるほど、技術の開発と発展は一筋縄ではいかないとジョンは改めて痛感した。

ハルバートン少将の提唱する、基礎機体となるGAT-X100番代シリーズの完成に、少しは役に立つことを願うばかりである。 

……録音と筆記のアプリを切った端末をイヴから返されながら、ジョンは改めて計画の達成を願った。

夜の双翼(後編)了 
 

 
後書き
コソコソ裏話①試験部隊の武器について
どんな不具合が起こるか分からないので、基本魔剣、悪魔の名前がついているぞ!でもジョンの腰の武装が『魔弾』という最後の銃弾が不幸を呼ぶ悪魔ザミエルの出演するオペラの名前のもじり(直訳するとマジックバレット)になってるのは、多分皮肉を込めたわざとだ!(異常に早い出世速度と、ちょっと前には妄想とか言われていたモビルスーツ構想が嘘から出た誠並みに持て囃されているため) 
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