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ドリトル先生の長崎での出会い

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第八幕その二

「オランダは坂道がないね」
「そうそう、あの国はね」
「平地の国よ」
「海を埋め立てて出来たね」
「そうした国よ」
「それで平地ばかりで」
 そうしたお国でというのです。
「標高もないけれどね」
「そうそう、あの国はね」
「海抜幾らもないね」
「だから海面が上がると困るのよね」
「少しでもね」
「けれど長崎は違って」 
 この街はというのです。
「本当にね」
「坂が多くて」
「まさにオランダと正反対だね」
「そのことがね」
「それを思うよ、佐世保だってね」
 ハウステンボスがあるこの街もというのです。
「そうだったね」
「結構坂道あったね」
「そこから基地見えたね」
「軍艦だってね」
「アメリカ軍の空母があったわ」
「そのことも違うから」
 だからだというのです。
「面白いね」
「全くだね」
「長崎の坂道の多さもね」
「色々勉強になって」
「先生も楽しんでいるね」
「歩くのが少し大変でも」
 それでもというのです。
「このことは面白いよ」
「全くだね」
「それじゃあね」
「これからも歩こうね」
「この長崎の街をね」
「そうしようね」
 笑顔でお話してでした。
 皆で坂道を歩き続けました、そして夜の闇が近付く頃にはホテルへの帰路につきました。その時にです。 
 ふとです、先生は着物を着て黒髪を整えた小柄な黒い目の若い女性と擦れ違いました。そうしてでした。
 先生は振り返ることなくです、皆に言いました。
「蝶々さんみたいだね」
「着物着て黒髪でね」
「しかも黒い目で」
「小柄でね」
「まさに蝶々さんだったね」
「舞台のね、何かね」
 さらに言う先生でした。
「不思議な感じがするね」
「そうだね」
「長崎で蝶々さんみたいな人と擦れ違うって」
「不思議ね」
「どうも」
「そうだね、ハウステンボスで中尉を思い浮かべる人がいて」
 そうしてというのです。
「そのうえでね」
「長崎で蝶々さんを思わせる人がいる」
「何かあるかもね」
「これはね」
「若しかして」
 先生はふと気付いたお顔になって言いました。
「蝶々さんの親戚の人達の子孫も」
「ああ、まだね」
「長崎におられるかもね」
「そうかも知れないわね」
「蝶々さんは武士のお家での出でね」
 そうであってというのです。 
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