世界の礎
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第五話 ナイル川その三
「調べますと国としてまとまっています」
「ナイル川流域で栄えているな」
「あの川の恵みで畑をもうけ」
「多くの富も持っているな」
「はい、侮れない力を持っています」
「そうだな、しかしだ」
義青はマスにそれでもと話した。
「既に敵の内情はわかっているな」
「隅から隅まで」
「ならばまずは金になびく者達に金を掴ませ」
そうしてというのだ。
「我が国に降ればだ」
「戦わずして」
「ファラオや貴族の地位をそのままにだ」
「暮らせるのですね」
「そうなることを言おう、この帝国は王はいてもいい」
そうした国だというのだ。
「何人でもな」
「王が最高位ではないので」
「私は言うなら王の上にあるな」
「はい」
マスはその通りだと答えた。
「言うならば王の上に立たれる」
「皇帝だな」
「そう言っていいです」
まさにというのだ。
「そこまでの方です」
「だからファラオ即ち王もだ」
「いていいのですね」
「天に二日なしだが王は日輪ではない」
こうもだ、義青は言った。
「だからな」
「それ故にですね」
「彼等もいていい、そして我が帝国に入ればな」
その時はというと。
「多くの恵みがもたらされる」
「エジプトに我等の恵みが」
「そしてファラオ達自身にもな」
「だからですね」
「そのことを伝えさせるのだ」
金で買収した者達にというのだ。
「それも買収と言ってもな」
「それでもですか」
「国を売れと言うのではない」
「言うことを頼むだけですね」
「私はエジプトを滅ぼさない」
決してというのだ。
「加えたいのだ」
「だからですね」
「そう伝える、だが恵みを言うだけではなく」
「他にもですね」
「見せるものがある」
それが何かも言うのだった。
「我々の武力をな」
「それも見せますね」
「今我々は三千万の人口にだ」
それに加えてというのだ。
「十万の兵があるが」
「その力も見せる」
「存分にな、戦おうともだ」
そうしようともというのだ。
「勝てないことを見せつけるのだ」
「そうして戦を避けるのですね」
「そうもしてな、寛大な条件に強大なものを見せる」
その両方をというのだ。
「そうしてだ」
「エジプトを降しますか」
「エジプトは豊かだ、豊かだからこそだ」
そうであるからだとだ、義青は強い声で言った。
「あの国を手に入れるぞ」
「そうしますね」
「これからな」
こう言って実際にだった。
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