彼は いつから私の彼氏?
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11-5
2月になると、美麗先輩、美雪先輩とかがうちの高校への進学の知らせが入ってきた。やっぱり、燕先輩、朝咲先輩の名前は無かったから忍埜山女学園に進むのだろう。
日曜日、私がジョギングから帰ってくると、お兄ちゃんが
「さっき 東方さんという人が女の子と一緒に 訪ねてきたぞ お母さんと水澄にって お母さんは居ないけど、水澄は1時間程で帰って来るって言ったら しばらく考えていて 後で 又 来るってさ」
「ふ~ん 東方・・・あそこの家かなー」
その後、しばらくして東方親子が訪ねて来て「あのー お母さん まだ 帰って無いんですけどー」と、言ったのだけど
「ええ でも 報告だけと思ってー この子 太子女学園に受かったんです 水澄さんのお陰 あの時、V塾の説明会で水澄さんの講演を聞いてから その気になって 私の理想に近い人 私はあの人を目指すんだってー それからなのよ 頑張り出してー 水澄さんのこと崇拝してるみたい だから お礼にお伺いしなきゃーてー」
「あっ そーなんですか おめでとうござます 私の後輩になるんだー でも、そんなー 理想に近いだなんてー 私 そんな人間じゃぁー無いですよー」
「でも 運動も学校の成績も素晴らしいってー 塾にもお礼に行ったんですけど、あそこの塾長さんも、すごく褒めてましたよ」
「そんなー 私 運が良かっただけですからー」
「そんなこと無いですわよー 全国チャンピオンなんて すごく努力しないとなれないですよー この子も中学に行ったら卓球したいんですって」
改めて見ると、ほっそりしているのだが、背も高くって短いスカートからの手足が長くって・・・雰囲気が智子の小学校の時に似ている。髪の毛は長くてストレートで前髪はおでこのところでスパンと揃えていて、胸まで髪の毛の束を持ってきていて両方の耳を出して残りの毛は後ろに流しているのだ。私がその 羨ましいほどのつやつやした髪の毛に見とれていたのか
「あのー やっぱり 長い髪の毛はじゃまですかねー?」というお母さんは明るい栗色のバツバツのショートヘァーで七三分けにピタッとしているくらいだった。
「あっ きれいな髪の毛なんでー 別に邪魔って訳じゃぁないとー・・・思います。私の場合は・・・前の自分と決別しようと思って 魔が刺したんですねー あのね 正直言いますと あそこのクラブは名門っていうだけあって 予想以上に厳しいです! 脅すんじゃぁ無いですけどー それに、バカ アホ ノロマとか毎日 罵声を浴びせられて、叱られて それまでの自分が否定されているみたいで 私も、恥ずかしくって 悔しくって 何度も練習中でも泣かされてきたんです 自分でバカになんなきゃーやってられないですよー でも パワハラって言うんじゃぁ無くて、その中で頑張れる自分をみつけた者だけが、選ばれて試合にも出してもらえるんですよー 一握りの人間だけです もちろん、資質とか体力もありますけど、中には小学校の頃から卓球に親しんできた人もいますからねー だから、途中で挫折する人も居ます 相当の覚悟なんですよー」
「まぁ・・・でしょうね・・・ だって みずき?」
「けど お母さん やってみなければ わからないじゃぁない? 香月先輩だって 中学から始めたんでしょ 私は 跡を追いかけるだけですからー」
(この ガキィー 私の努力はそんな簡単なものじゃぁ無かったのよー 体育館の隅で何度も泣いた 合宿の時だって、夜中に独りで泣きながら走っていたのよ 翔琉にだって 逢わないようにして頑張ったのよー)
「そっ そう ・・・ 一緒に頑張ろうネ 嬉しいわ」と、その時は、社交辞令のつもりだった。
お母さんが帰って来て、その旨を報告すると
「そう 良かったじゃぁない あのね 塾長さんが、時々 お店に来てくれてね あそこの塾から2人 太子女学園に受かったそうよ その他にも教育大付属とか有名中学とかに受かったそうよ 4月からの生徒さんの申し込みも順調で浮かれていたよ この前もプリン10個買って行ったわ 今は苺が入っていて それ好きなんだってー」
「はぁー その苺 食べたいーぃ お母さん」
「そうね だって 東方さん 苺 置いて行ったんでしょ これっ 大きくて おいしそーじゃーない」
「そーなんだよー 早く食べよーぜー だけど なんだな あの子 水澄を見習って、卓球やるって言っていたけど そんな 簡単じゃぁ無いよなー 水澄は天才だったこと忘れてるんじゃぁなかろーか まぁ 見た目は良いけどなー モデルのほうが良いんじゃぁない?」
「お兄ちゃん! ほんとーにぃー ああいうタイプに弱いよねー 智子でしょ 花梨でしょ あの子 それに、私 雰囲気 みんな 一緒」
「おい! どさくさに紛れてー 何で、そこに 私が入るんじゃぁ?」
「ふっ だって お兄ちゃんの一番の 恋人だから・・・」
そして、2月も終わる頃、若葉から知らされたのは「監督が2月いっぱいで辞めるんだってー」と、衝撃の言葉だった。若葉が言うには、校長と意見が衝突していたらしい。監督は近畿大会にも、勝って当たり前の大会に出ても、選手が消耗するだけだからと出場申し込みをしなかったのだ。そのことを発端に、全日本ジュニァにも協会からの打診を辞退していて、校長は我が校の宣伝になるんだからと言うのを強引に拒絶したかららしい。
私達は監督の言うことにも理解していたのだが、確かに、校長の言うように大会に出て勝って優勝すれば学校も盛り上がるのにーって、不満も持っていたのはあったのだ。
「花梨 どーすんのよー 監督の言うことだからって あんたが 一番 理解してたんちゃうのー」
「なんだけどー どーせーゆうん? 水澄やって 監督と響先輩が、あんたの才能を引き上げてくれたんやんかー」
「うん そーやけど・・・二人でな 校長に直談判にいこー 辞めさせないでって」
「あほっ 単純! ウチ等が知るってことは もう 決まったことやー そんなん 通用するわけないやんかー」
「そーかなー 花梨は 何で そんなに いつも 冷めてるんやー」
「冷めてるんちゃう 自分達の心配してるんや 次の監督はどんなんやー ウチ等にとっては2連覇かかってるんやでー ヘタに動かされたら、影響するやんかー それに、1年も育ってきてるんやでー」
「うっ まあ おっしゃるとおりでごぜーますだ」
「それに ウチがもっと 心配してるんは 若葉もゆうとったけどな あの監督の次の行先やー もしかしたら、あの学校ちゃうやろーか」
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