有名人の吸血鬼

「外見でどうなるものか」
「あの、それ業平産が言っても」　
　どうかとだ、池山は業平に返した。
「説得力ないですよ」
「私の外見が整っているからか」
「そうです」
　まさにというのだ。
「そうイメージしました」
「私は今言った通りだ」
「怨みとかをですね」
「そうなるまで深く持たずにな」
「世を去られましたか」
「ある程度以上達観もしてな」
　そうしてというのだ。
「この世からな」
「去られましたか」
「そうだったからな」
　だからだというのだ。
「吸血鬼ではない、この度もあちらから来たが」
「俺達の話を聞いて」
「そうであるがまことにだ」
「吸血鬼じゃないですね」
「そのことは言っておく」　
　こう言うのだった。
「いいな」
「わかりました」
「ならいい、では帰るが」
　業平はあらためて言ってきた。
「コンビニに来た、何か買おう」
「そうされますか」
「酒に肴をな」
「何でも買って下さい」
「日本酒と干したものにな」
「そうしたものに」
「あと肴ではないが甘いものも買おう」
　こちらもというのだ。
「そうしよう」
「甘いものもですか」
「私が生きていた頃は甘いものは果物かな」
　それかというのだ。
「かなり貴重であったが蜜位だった」
「蜜ですか」
「蜂蜜だ、あまりに高くな」
　その頃はというのだ。
「私もそうはだ」
「食べてなかったですか」
「そうであったがな」
　それがというのだ。
「今は違う」
「蜂蜜うなんて普通に買えますよ」
「店でな」
「他の甘いものも」
「そうだ、饅頭があればな」
　それならというのだ。
「そのだ」
「お饅頭も買われて」
「あちらに戻ろう」
「そうされますか」
「うむ、ではな」
　それではというのだった。
「今より買わせてもらう」
「どうもです」
　池山は笑顔で応えた、そうしてだった。
　業平が日本酒の瓶と干し肉にアイスクリームを買うのを見届け会計も受けた、そのうえで店を後にする彼に尋ねた。
「アイスお好きですか」
「一度食べて好きになった」　
　業平は会計が終わってから微笑んで話した。
「そうなった」
「そうですか」
「それで今もな」
「買われたんですね」
「そうだ、そしてだ」
　そうしてというのだ。
「あちらの世に帰ったならな」
「日本酒に干し肉に」
「最後のアイスを食べる」
「お酒の後で甘いものですか」
「私はいける、だからな」
「食べられますね」
「そうする、では機会があればな」
　その時にというのだ。