東京紅茶舘
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第四章
「以後私はサングラスをかけて髪形も変えるから」
「わからない様にされますか」
「全く。あばたでわかるとは」
「今も知っている人は知っていますから」
「子孫も侮れないよ」
「他にも色々知ってますよ」
福本は笑ってこうも言った。
「貴方のことは」
「恥ずかしい話もだね」
「言いませんが」
「ではこのまま黙っていてくれるかな」
「喋っても誰も信じませんよ」
「いやいや、子孫は侮れないものだとね」
そうだとというのだ。
「わかったからね」
「だからですか」
「もうね」
それこそというのだ。
「サングラスもかけるから」
「それでわからない様にしますか」
「そうするよ、そして秘密にしてくれるなら」
それならというと。
「お願いすればミルクティーをいつも淹れるよ」
「イギリスと日本のそれぞれのよさが合わさった」
「最高のミルクティーをね、それでいいかな」
「それなら」
「じゃあそういうことで」
「宜しくお願いします」
「ニャア」
ここで猫の鳴き声が聞こえた、見るとだった。
その人の傍に黒猫がいた、その猫もそのままであった。福本は猫と目が合ってそれでついつい笑ってしまった。
福本は約束を守ってこの話は誰にも言わなかった、義理堅い性格であったのだ、そして休暇が終わったギンガムと一緒に店に入ってだ。
いつもミルクティーを淹れてくれる様にお願いした、そしてそのミルクティーを飲んで笑顔で言うのだった。
「最高ですね」
「全くだよ、日本で最高の紅茶が飲めるなんて」
「思いませんでしたか」
「イギリスの葉と日本のお水と最新の技術ととびきりの腕が全てある」
「最高のお茶ですね」
「これを淹れる人は凄いよ」
「全くですね」
福本は店の奥の方をちらりと見て笑顔で応えた、そうしてだった。
ロンドンの話をした、するとギンガムは雨と霧が多いことを話した。福本はその街のことを彼から聞いてまた笑顔になったのだった。
東京紅茶舘 完
2024・9・11
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