SAO<風を操る剣士>
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第一部 --SAO<ソードアート・オンライン>編--
第四章 クリスマスの夜に…
第30話 《背教者ニコラス》
前書き
少し短いです。
※現在1話から順々に話の書き方を修正中です。
修正といっても話の内容を変えるわけではないのでそのまま読み進めても大丈夫です。
前書きに『■』←このマークがあれば修正完了で、『□』←このマークがある場合修正中、なければ修正前ということでよろしくお願いします。
「クソ……どんだけ警戒してるんだよ、キリトの奴。これで二回目だぞ。……シリカ大丈夫か?」
「だ、大丈夫です……。でも、キリトさんの速さに付いて行くだけ、もう……。あの、あたしの所為でキリトさんにバレてないですか?」
「大丈夫だ。戦いや速く走るのに集中しているのか、今のところはバレてない」
「よ、良かった~…」
シリカが、自分の《隠蔽》スキルが上手に出来ていないくても、キリトを追いかけているのがバレていないと知り安心した声を漏らす。
…今、俺とシリカはキリトにバレないように、キリトを後ろから追いかけている。簡単に言えば尾行だ。
けどキリトを尾行するのは、かなり大変だ。
今の俺とシリカの会話から想像ができるだろうが、まずキリトは走るのが速い。
しかも、尾行し始めてから二回ほどモンスターと戦闘があったのだが、その度に後ろを確認して尾行がいるかを確認してくる。ホント、どれだけ警戒してるんだよ…。
その確認の所為で、キリトの速さに《値移行》を使いながら追いかけて、隠れる為に《隠蔽》を使いながら《追跡》スキル使い、アルゴに貰った地図を確認しながら進む。
それに加えてさらに、《聞き耳》で俺たちが温泉から出るくらいに降りだして積もってきた雪を、キリトが踏む音を聞き取りながら、一定の間隔をあけて後を追う。
これだけの事を行いながら後を追うのには凄い集中力が必要で、シリカの場合《隠蔽》スキルが疎かになり始めていた。足音とかが鳴り出してきたしな。
それでもさっき俺が言ったように、キリトにはまだ気付かれていないらしい。
そうやって再び追い始めてから数分が経ち、急にキリトが立ち止まった。
それと同時にキリトの近くに十人ほどのプレイヤーが現れた。
現れた奴らとも距離が離れている為か、俺たちには気付いていないらしい。
《聞き耳》スキルで少しだけキリトとの話し声が聞こえるけど、この声は……クラインか?
そうなら多分、クラインもキリトを止めに来たんだろうな。
…キリトを止める為にクラインの味方をしに行きたいけど、悪いけどキリトを足止めしておいてくれよ。
「シリカ……多分だと思うけど、クラインがキリトと喋りながら足止めしてくれてる。今のうちにキリトを先回りして待つぞ」
「良いですけど……でも、シュウさんはキリトさんが向っている樅の木の場所が分かるんですか?」
「今キリトが向って行ってた方向にあるワープポイントに入るとあるんだろうな。多分。…地図を見る限りだとあそこを通ると他の場所へのワープポイントも無いから、あそこが最後のワープポイントだ」
「分かりました。キリトさんにバレないように、先に行って隠れておくんですね」
「そういう事……それじゃ、行くぞ」
======================
キリトやクラインたちにバレないようにワープポイントに入り、そのまま先に進む。
奥に進むと、一本だけ広く周りと間隔のあいた樅の木があった。
「あれですね。噂の樅の木というのは。……あ! それよりドコに隠れますか、シュウさん?」
「…………どうやら隠れる必要が無くなったみたいだぞ、シリカ」
「へ!? ……あ…」
シリカは俺の言葉の意味が分からなかったのか、驚きの声を出す。
しかしすぐに理由が分かったのか、シリカは驚き顔から真面目な顔になる。
……クソ、早かったな…
「……シリカ、それにシュウ………こんな所で何してるんだ…」
樅の木に向いている俺の後ろから声がする。
当然《索敵》スキルで、後ろに近づかれた時点でその声の正体が分かっていた。
なので俺は振り返らずにそいつに話しかける。
「ココにいるってことは、目的は一つしかないだろ……久しぶりだな、キリト」
俺がキリトの名前を呼ぶのと一緒に振り返ると、キリトが俺の事を剣の柄を握りながら睨んでいた。
…すでに戦う気満々な訳ね……俺と。
「……久しぶりに会った友達と、いきなり戦うことになるなんてな…」
ため息混じりに文句を言う俺。
けど仕方ない。第十一層の《街開き》以来キリトには会っていなかったから、約一年も会ってなかったことになる。
でも再開していきなりこんな状況じゃ、キリトの事情を知っていても、そりゃ文句を言いたくもなるだろ。
あと、ダンジョンに入る前の日に《長期クエスト》に入る事をメッセージにして送ったのはリズだけだ。
キリトやクライン、エギルには最前線を離れてから会ってなかったし、なら余計な心配などをさせないように送らなかった。前線から離れた事も少し気まずかったしな。
そんな訳で、アルゴにも俺たちの情報を他のプレイヤーに売らないよう頼んだ。(口止め料はダンジョンから出てきてから請求、だそうだ)
なのでキリトが、
「……最前線から半年以上離れていたお前が、どうしてココが分かったんだ…」
と、俺に向って言ってきた。
まぁ、最前線から離れていた俺とシリカが自分より先に目的地に着いていたら、そう言いたいのも当然の反応だ。最前線のプレイヤー…つまり攻略組と中層プレイヤーとじゃ情報力に差があるからな。
アルゴにお前の事を教えてもらった、って言うのは簡単だけど、情報屋のアルゴが個人の感情で俺達にお願いしてきた事もあり、それは色々とマズいことになりそうなので、一応は伏せておくことにした。
「俺たちが先についていた理由については、さっきのクライン達と一緒かな。何話してたかは知らないけど、キリトのことを止めに来てたんだろ?」
「…さっきのクライン達のことを知ってるって事は、俺の後を尾けて来てたのか?」
「そうだよ。それでクラインと話してる間に先回りしたんだ」
「そこをどけシュウ。邪魔するなら……斬るぞ」
「シュウさん……」
俺の言葉を聞いてから、剣を抜くキリト。
そのキリトの姿に、俺に向って服の裾を掴んで心配そうな声を出すシリカ。
…キリトの奴、マジで俺とシリカを斬ろうとしてるな。……仕方ない。
俺は服の裾を掴んでいるシリカの頭を撫でながら、シリカにしか聞こえないほどの小さな声で、
「……大丈夫だよ」
と言って、シリカを少し安心させてからウィンドウを出す。
そしてキリトに向って《初撃決着モード》を選んで《試合》を申し込んだ。
「キリト、俺を斬って退かせたいなら《試合》で勝負だ。俺が負けたら、このまま帰る。けどキリトが負けたら、お前の戦いを観戦させてもらう。観戦に関しては手は出さないつもりだけど、キリトが危なくなったら手は勝手に出させてもらう。良いか?」
「……前線から離れたお前が、俺に勝てると思ってるのか?」
「それはやってみなきゃ分からないだろ。……それより、良いのか悪いのかハッキリ言ってくれ」
「もし、嫌だといったら」
「縄に縛ってでも戦わせない。そのあと戦えなかったせいで自殺しようとするなら、システムが邪魔して死ねない監獄エリアにでも飛んでもらう」
「結局、俺と戦う事になるんだな。……分かった、時間が無いから早く終わらせるぞ」
そう言って、キリトは俺からの《試合》を受託した。
その後、キリトと俺の間に『60』というカウントダウンが現れる。
「シリカは少し下がってろ」
「はい」
俺が下がるように伝えると、シリカは素直に後ろに下がる。
そのまま俺とキリトはそれぞれ構えると、カウントが『0』になるのを待つ。
……正直キリトにはあんな見栄を張ったが、この試合は勝てる気がしない。
キリトと戦う前は、いつもあらかじめ動きを見た後で、先の動きを予測しやすい状態だった。
しかし、今はキリトと戦うのは約一年ぶり。これだけあれば、癖なんかも変わるだろう。
なので今は、ただでさえ読みにくかったキリトの動きが、さらに良く分からない状態だ。
でもだからといって、キリトに負けるという訳ではない。
実感がないから自信が起きないが、俺もシリカと一緒にダンジョンに入って少しは成長したはずだ。
けど、長引いてはほとんどの確立で負けるはず。なら、勝つ為にやるべきことは一つしかない!
二撃目からは予測できないけど、キリトの最初の一撃目だけは予想が付く。
早く終わらせたくて、俺が前線から抜けて自分よりレベルが低いと思われて油断している最初の一撃は、多分《ヴォーパル・ストライク》単発重攻撃の突きだ。
なら俺のやるべきことは、このキリトの最初の攻撃をカウンターで攻撃すること!
その為に、俺は剣を右肩に担ぐように構える。
そして構え始めて数十秒経ち、ついにカウントが『0』になる。
その瞬間キリトが俺に向って走り出し、すぐに俺の読み道理の《ヴォーパル・ストライク》を物凄い速さで放ってきた。
俺はそのキリトの《ヴォーパル・ストライク》に、次の動作に出られやすい程度の《体重移動》を乗せて、担ぐようにしていた剣を上から下へ振り下ろす。
すると狙いが少しずれたキリトの剣が、少し掠りながら俺の左の脇腹の近くを通る。
そして、そのまま硬直で動けないキリトに、使っていなかった左腕で《体術》スキルの《閃打》を《体重移動》を全力で乗せて放つ。
俺の放った《閃打》はキリトの胸に当たり、キリトが後ろに吹き飛ぶ。
その後、数秒経ってから俺の前に『WINNER/シュウ 試合時間/3秒』という《デュエル勝利者宣言メッセージ》が現れる。
あ、危なかった~。……でも、何とか勝てたな。
キリトの奴、あの《閃打》に反応して最後避けようとしたよ。ホント、流石だな。
でも、俺も反応される事を予想してギリギリまで剣を振るのを待ったし、《閃打》に《体重移動》を乗せやすくする為と、次の動きを1モーション早く動く為に、ソードスキルを使わずに《体重移動》を少ししか乗せずに《ヴォーパル・ストライク》に挑んだ。
その為、少し脇腹を掠ってしまった。
俺の《筋力値》と《ヘビーハードネス》の重さ、そして《体重移動》と少し鍛えられていた反射神経が、上がっていたり上手くいったりしての初勝利だな。この試合は。
「約束通り、邪魔にならない所でお前の戦いを見せてもらうぞ、キリト」
俺は立ち上がるキリトにポーションを投げて渡しながら言うと、キリトは諦めたように、
「……勝手にしろ」
と、返してきた。
「ああ……シリカ、行くぞ」
「はい」
そう言ってシリカと一緒に少し離れた場所に行き、位置に着くと同時くらいに、どこからともなく鈴の音が響き始める。
そして空を見上げると、巨大なソリが走ってきて、樅の木の上辺りでソリから《背教者ニコラス》が降って現れた。
《背教者ニコラス》の姿は、赤と白の上着に同色の三角帽子をかぶり、右手に斧、左手に大きな頭陀袋をぶらせげていた。
……結構、グロテスクだな。
そして、ニコラスがクエストに沿った台詞を言うつもりなのか、縺れたヒゲを動かそうとしたら、
「うるせぇよ」
と、キリトは呟いてから、ニコラスに凄い勢いで向って行った。
後書き
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