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醤油のシミ

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第一章

                醤油のシミ
 夏で半袖に白いブラウスだった。
 橋本蘭世、黒髪をロングにして切れ長の大きな澄んだ二重の目とやや分厚い赤い唇を持つ細面の彼女は昼食の時に同僚に言った。背は一五八位ですらりとしていて膝までのタイトスカートの色はグレーである。
「白い服って汚れが目立つのよね」
「それが問題よね」
「だからね」 
 自分が食べている天婦羅定食の天婦羅に醤油をかけつつ言った。
「こうしてね」
「お醤油使っても」
「注意しないとね」
「服にかかったらね」
「もうね」 
 それでというのだ。
「大変よ」
「そうなのよね」
「ほんの少しでもね」 
 蘭よは少し苦笑いになって述べた。
「服にかかったら」
「終わりよね」
「もうすぐにね」
 それこそというのだ。
「取らないとね」
「残るのよね」
「それが厄介よ」
「お醤油は欠かせないけれどね」
「日本人にはね」
「服に付くと大変なのがね」
「困るわ」
 こうした話をしつつだ。
 蘭世は同僚と会社の食堂で食べた、そしてだった。
 午後はその同僚と一緒に仕事で海上自衛隊の基地に行った、すると制服は二つあった。一つは上下白の半袖開襟のものでもう一つは。
「白い詰襟ね」
「決まってるわね」
「昔の海軍の軍服ね」
「今もあるのね」
「いいわね、ただね」
 蘭世は同僚に言った。
「あれは大変よ」
「大変っていうと?」
「だからお昼お話したでしょ」
 蘭世はこの時のことから話した。
「白い服だとね」
「ああ、お醤油が付いたら」
「シミになってね」
 それでというのだ。 
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