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彼は いつから私の彼氏?

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10-4

 次の日曜日。私は言われていた塾に10時半頃着いた。懐かしい気がする (V塾) の看板が掲げられた入り口を入ると事務室に学園の先輩の石積あかりさんが座っていた。

「水澄ちゃん 久し振りネ 今日は ごめんね お父さんが無理言っちゃってー」

「あっ あー 良いんです お世話になりましたからー 先輩 今日は?」

「うん 時々 お手伝い 私ね 阪大の工学部に受かったのよー だから 
手の空いた時には・・・」

「そーなんですかー さすがですねー」

「ううん それより 水澄ちゃんも 活躍してるんで びっくりしてるのよー 響にはよろしくネって言ったものの・・・ 中学に行ってからなんでしょ 卓球」

「はぁー みんなに助けられて・・・なんとかー」

「うん やっぱり 持ってたのネ パワー 今日はよろしくネ あっ そう 今年の春 入塾生 増えたの 父がね うちの塾生が短期講習で太子女学園に合格なんて 宣伝したものだからー もちろん あなたの名前は出して無いよー でも 今回は もっと増やそうとしてるみたいネ」

「・・・」

 あかりさんに案内されて、2階の会場に。私はいつも1階の仕切られた部屋だったので、2階には初めてなのだ。大きな部屋には30人位の小学生が座っていて、壁際にはお母さん達が立って居て、中にはお父さんの姿もあって、その光景に私は少し押され気味だった。塾長が、前に立って説明をしていて、しきりに生徒ひとりひとりの学力にあわせて個別に指導していって伸ばしていくということを強調していた。少し前から私の姿を認めていたのだろう。そして

「今日は、とうV塾の卒業生の香月水澄さんに来てもらいました。彼女は短期間ではあったのですが、ここで学んでくれて見事 名門の太子女学園中学に合格したのです。そして、ここで培った集中力は素晴らしくて、今2年生なのですが、中学に入ってから始めた卓球では今年の夏 全国優勝という輝かしい成績を収めました。学校の成績では入学試験は英数Sクラスでも合格していたのですが、あえて一般クラスにいって、それでも学年では上位に入ってるというがんばり屋さんなのです。だから、今日は体験談をお話ししてもらって皆さんの参考になればと、無理にお願いしてきたもらいました。じやーお願いします。香月さん」と、紹介されて、前に招かれた。

「初めまして 香月水澄です 太子女学園中学校2年生です」と、頭を下げていると

「みずみちゃん 優勝おめでとう」と、拍手とともに誰かの声が・・・名前で呼ぶなんて、お母さんの知り合いなのか、近所の人なのかわからないけど、それにつられて皆が拍手してくれていた。

「私がお母さんに連れられて、恐る恐るここに初めて来た時、応対して下さったのが塾長さんだったのです。その時、絶対に合格するんだいう強い意志があれば受かるとおしゃってくださって、我々が手助けするから大丈夫とも。だから、私はここに通おうと決心したんです。塾長さんは、いつも集中するんだよ 目の前の問題のことだけを考えて、後は何にも考えないで、とにかく集中しろって・・・いつも、私のこと 個別に熱心に対応してくださって、私は心強かったんです。だから、不安も無かった そのうち、絶対に合格するんだと自信もついてきたんです。そして、みごと 合格させていただきました。今 勉強にも卓球のことにも 集中して対応できるのは・・・ここで、このV塾で学ばさせてもらったお陰だと感謝しているんです。もちろん 生徒さん それぞれに学力の違いもあると思いますが、それに丁寧に付き添って対応してくださる塾長さん初め先生方もおられます。安心してお子さんをお預けになられる塾だと思います」私 こんなの初めてなので、最初 声が震えていたと思うけど そのうちに落ち着いて話せていた。

 終わると全員から拍手をもらった。塾長さんも握手を求めて来て、お礼を言っていた。帰りにあかりさんが送ってくれて

「みずみちゃん 素晴らしかったわー 名スピーチよ! お父さんも大満足だったと思うわ ありがとうネ」

「そんなー 私 震えてしまって 思ってた通りにしゃべれたかどうか」

「ううん 堂々としてたわよ さすが学園のスターだよね」

「そんなー」

 その夜、お母さんが帰って来て

「水澄ちゃん ありがとう 塾長さんがお店に来てね 喜んでいたわよ さすがに優秀な娘さんですねって 水澄ちゃんの後ね その場で申し込む人が10人以上居たそうよ おそらく、定員の25人は 直ぐにいっぱいになるでしょうって 感謝してたわよ」

「そう 良かったわー 私 申し込む人が誰も居なかったら どうしょうって考えていたの」

「そんなこと無いわよー 塾長さんが言うのには すごい 心を打たれるスピーチだったてっ お母さんも聞いてみたかったわー  それにね あなた達がおいしいって褒めてたプリン10個も買ってくれたの あれ 評判も良くって、売れ出してるわ
 水澄ちゃんも、すごく塾のことも褒めてたそーじゃぁない あなたも 抜け目ないのねぇー」

「そんなこと無いよぅー 必死だったんだから 何しゃべったかあんまり覚えて無いの」

「水澄ちゃん 下書きとか無かったの?」

「うん その場で・・・思い出しながら話したの」

「・・・あなたって人は・・・」

 夕食の時、お母さんが

「水澄ちゃんは いつもお母さんの我儘聞いてくれるのよねー 今日も、お母さんが褒められているみたいで嬉しかったわぁー」

「だってさー お母さんは私達の為に一生懸命働いてくれてるんだものー 私に出来ることをしてるんだよ」

「その言葉聞くだけで すごく 嬉しいのよー 水澄ちゃん なんか欲しいもんとか無い?」

「・・・お母さん 来週の日曜 翔琉のサッカーの試合があるの 応援に行きたいの 良い?」と、私は食べながら、普通のように・・・思い切って聞いてみた。

「いいんじゃぁない 翔琉君も水澄の応援にも来てくれてたんでしょ 水澄ちゃんも行ってあげなさいよー」

 その瞬間 私は、聞き間違いじゃぁないかと思ってたが、箸を落としてしまって、お兄ちゃんは飲み込んだものでむせてしまっていた。

「水澄ちゃんの お仲間も居るんでしょ? 皆に元気づけられたんだから、ちゃんとお礼言ってくるのよ」

 私は、お兄ちゃんと目を合わせていて、二人で唖然としていたのだ。 
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