ハッピークローバー
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第百五十五話 他人の幸せその十
「人じゃないわね」
「そこまでいってるわね」
「ええ、しかしそんな人が嫉妬深いのね」
「何も努力しない人が」
「やっぱり普通はね」
「努力している人は嫉妬しないわね」
「そのことに必死だから」
努力している対象に身体も心も全力で向けているからだというのだ、他のことに目を向ける暇がないというのだ。
「それでよね」
「そうね」
「手塚さんはそれでも嫉妬していたけれど」
「けれどその嫉妬をいい作品を描くことに向けたから」
「いいわね」
「その人に悪いことしないでね」
「邪魔したりね」
手塚治虫がそうしたことをしたとは言われていない。
「しなかったしね」
「それは立派ね」
「嫉妬して何処が面白いんだとか言っても」
巨人の星にそう言ったという、読売ジャイアンツという邪悪の権化を正義として描いた恐ろしいプロパガンダ漫画である。
「そうしたことしなかったし」
「そのこともいいことよね」
「よく権力使ってね」
「描けなくするとかね」
「そういうお話あるけれど」
「手塚さんって物凄く有名になっていても」
「そうしたことしなかったから」
少なくとも地位や権力を悪用する人間ではなかった。
「いいでしょ」
「そうね」
一華も確かにと頷いた。
「それなら」
「本当にね」
「外道な人は」
それこそというのだ。
「手段を選ばないで」
「何でもするわね」
「地位や権力あったら」
「それを悪用するわね」
「手塚さん位になったら」
デビューから有名になり漫画界第一の人物にまでなりそれはこの世を去るまで続いたことであった。
「出来たけれど」
「しなかったわね」
「これだけでもね」
「凄いことね」
「まあ人として当然でも」
理虹は考える顔で話した。
「そんなことしないことは」
「嫌いな相手とか権力を使ってどうにかするとか」
「しないに限るけれど」
それでもというのだ。
「やっぱりする人いるからね」
「何処でもね」
「もう独裁者に逆らったら」
そう言われる者達にというのだ。
「どうなるか」
「ヒトラーやスターリンとか」
「粛清間違いなしでしょ」
留奈はすぐに言った。
「もうね」
「確実によね」
「あんな人達に何か言ったら」
それこそというのだ。
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