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彼は いつから私の彼氏?

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兄 達樹の話

 お父さんが水澄の決勝の試合を配信すると言うので、サッカーの練習を終えて硝磨の家に行った。硝磨はパソコンで見られるようにしておくと言っていた。お母さんが仕事で見られないからとメモリーにも保存するように頼んでおいたのだ。だけど、お母さんにしてみれば、生でなんて、とても見ていられないのだろう。

 練習が終わった後、お父さんから電話があって、団体戦は優勝したことを聞いていた。お父さんも興奮している様子だった。硝磨の家には1時過ぎに着いて、早速、団体戦の準決勝の水澄の試合だけ見て、そろそろ水澄の準々決勝だろう 3試合目って言ってたからー やっぱり 生で見ようよと、切り替えて 2試合目の途中だったけど、水澄と同じ学校の若葉って言う子が勝ち進んでいた。確か、水澄の相棒のはず。

 その時、翔琉は自分の部屋でスマホで見ると言って、こもってしまっていた。水澄の試合が始まって、圧倒的に優位のまま試合を終えていた。

「すごわねー 水澄ちゃん 危なげも無く 相手を寄せ付けなかったわよ」おばさんも感激していた。

「だよなー 相手も大阪代表で3年生なんだろう すごいなー スマッシュ スパンと決めてなー スカッとするなー」硝磨も興奮していた。

 水澄の普段の努力を知っているから、それぐらいは当然だろうと俺は思っていた。

「どうする? 団体の決勝見るか?」と、硝磨が聞いてきたけど

「いいや 圧倒的強さで勝ったらしいから、最初から見たい 次の準決勝 待とうよー 4人のうち 3人が太子女学園なんだから、全部見たい それに、水澄の相手は去年優勝の奴なんだよー 水澄がどこまで喰い下がるのかも見たい」

 準決勝が始まって、太子女学園の2年生同士の戦いだった。片方の子は、ダブルスで水澄の相棒なのだ。最初は拮抗しているみたいだったが、最後は一方的に決まっていた。だけど、勝ったほうの子はにこりともしないで、何を考えているのか、水澄を黙って見詰めていた。確か、去年の秋 水澄の相棒だったはず。

 水澄の試合が始まった。 (がんばれ 水澄 俺は、お前にジョギングもたまにはトレーニングも付き合ってやったんだぞ どんな時も頑張る水澄は負けない)と心の中で応援していた。

 1ゲーム目を取った時 「いけるぞー いけ 行けっ! 水澄ぃー」と、皆で声を出していたが、2ゲーム、3ゲームと立て続けに取られてしまって

「さすがに 去年のチャンピオンだな 強い」と、硝磨は諦め半分だったが

「いいやー 水澄はそんな奴じゃぁない これからだよー 俺には伝わって来る」

 そして、3ゲーム目は水澄が取り返して、最終ゲームも最後までもつれ込んだ。もう、3人で「がんばれ がんばれ」の合唱だった。水澄が何とかくらいついていて、マッチポイントを掴んだ時は、シ~ンとして見ていて、最後 水澄が飛び跳ねて打ったように見えた。瞬間 相手は拾えなくって・・・

「やったぁー やったぁー 水澄 すごぉ~い」の大騒ぎだった。俺は飛び跳ねていたかも知れない。

 決勝戦も、水澄の同級生 前の相棒 岩場花梨との戦いで、白熱した高速ラリーの応酬で、最後までもつれていた。自分で手の平をギュッと握り締めているのがわかった。そして、相手はマッチポイントを迎えていたが、水澄がさっきと同じように飛んでスマッシュを・・・「やったー」決まったと思ったが、ボールがポトンとネット際に返ってきていた。

「えっ えー そんなのありかよー」

「はぁーあ う~ん でも 水澄ちゃんも すごかったよ あのラリーなんて そうそう見られないぞー 中学入ってから始めて、2年生で全国準優勝だぞー 普通じゃぁない」と、硝磨も盛り上がっていて、そのまま、団体戦の決勝を見て、太子女学園の快進撃に拍手を送っていた。特に、水澄達のダブルスにはすごぉーいの連発だった。

 落ち着いた時、おばさんが「達樹君 夕食 食べて行きなさいよー 翔琉もね 夜釣りに行くってー そろそろ出かけるのよー」

「ふ~ん 夜釣りかぁー おじさんは?」

「あの人 お盆明けから インドネシァ 会社で雇う人の面接だって」

「インドネシァ人・・・」

「そうなの 前はベトナムだったんだけど この頃 文句ばっかーで評判悪いのよ」

「あぁ 日本に慣れっこになってきてるって聞いたことがある」

「そうなのよー 一番 最初はね あの人ったら 翔琉が生まれて、直ぐにベトナムに 人を雇う為 行ったのよー 3か月間もね 私はこの子も小さかったでしょ 翔琉はビィビィ泣いてうるさいしー 苦労したわー」

「翔琉が生まれて すぐ・・・」

「そうよ あの子 4月28日生まれでしょ その後直ぐに あの人 30日には飛行機よ 連休前なのに 男って 勝手なのよねー」

 その瞬間 側にミサイルが落ちて爆発音とともに閃光が走ったような気がした。

「おばさん おじさんは4月の末から3か月間 日本には居なかったんですか?」

「そうよー 一度も 帰ってくること無くね 向こうで若い女の子と…×〇×〇・・適当に羽根伸ばしてね」

 もう おばさんの話は聞こえてこなかった。(水澄 お前は やっぱり お父さんとお母さんの娘なんだよ! そして、間違いなく俺の妹だ)

 おばさんの用意してくれたご飯もそこそこに、俺は家に帰ってきたけれど、お母さんは帰って無くて、7時過ぎに帰ってきた。水澄が居ないので自転車を使ってたのだろう。

「達樹 達樹ぃー あの子 優勝したんだってねー さすが 私の娘よねー」

「お母さん 落ち着いて聞いてくれ 話し あるんだ」

「なによー 早く 水澄のん 見せてよー」

「あのさー それは後でゆっくりと・・・ 今日、俺は硝磨んちに行ってたろう?」

「うん それがぁ?・・・」

「向こうのおばさんが話してたんだ 翔琉が生まれた後、おじさんは直ぐにベトナムに行ったんだって 仕事のことで」

「だから それがどうしたの?」

「だからー 翔琉の生まれた4月の末から3か月間 ベトナムなんだよ! 日本には居ないんだよ!」

「えー・・・」「達樹 今 光が走った?」と、お母さんは動揺していたみたいだった。

「達樹 それっ 確かなの?」

「ウン 翔琉は4月28日生まれなんだよ 30日におじさんはベトナムに飛んだらしい だから おばさんの記憶違いじゃぁないと思う 5月には日本には居るはず無いんだ」

「・・・私の思い違いだったの・・・」

「そーだよ 水澄はお父さんとお母さんの娘なんだよ! 俺のすばらしい妹なんだよ これからも ず~っと そして 翔琉と水澄は兄妹じゃぁ無い! さっき お母さん 光が走ったのって聞いたよね 俺も 最初 聞いた時 同じようだった おかしいよねー へっへーへー」

「そーなの だけど あの時 お母さんは間違いを・・・」

「何の話だよー 知らなぁ~い 今 お父さんとお母さんに囲まれて、俺と水澄は幸せになっているじゃぁないか これからもな! それで 良いんだよー お母さん」

「達樹」と、俺を抱きしめてきた

「よせよー 暑苦しいー 水澄の試合見ようかー あいつ 恰好いいんだぜー」

 その後、お母さんは水澄の試合の模様を見ながら、「水澄 私達の娘よねー がんばれ」と、涙を流して見ていたのだ。途中でお父さんが帰って来て、飲んできたみたいで、二人で録画を見ているそばに来て、あーじゃ こーじゃと注釈をしていて うるさかった。

「あなた! 少し、黙ってください! 私達の娘の水澄が頑張っているんですからね!」と、叱られていたのだ。

 
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