スーパー戦隊総決戦
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第九話 天使達の降臨その八
「では皆で鹿に煎餅をあげてだ」
「せんと君と握手をしようか」
「あの人達何なんでしょうね」
「撮影じゃないのか?特撮の」
近鉄の駅員達はその彼等の後ろでそんなことを話していた。
「どう見ても何処かの星の宇宙人とかじゃないですよね」
「そんなのがここまで露骨に駅に出て来るか?」
「絶対にないですよね」
「だから違うだろ」
まさに盲点であった。誰も明らかに人間でない姿で電車に乗って来るとは思いもしない。しかし誰もそれを狙ってしているわけではない。
「あの青い梟も」
「梟が昼間にいるか?しかも青い梟なんてな」
「いませんよね」
「だから何かの番組の撮影だろ?」
「やっぱりそうですか」
「そうだ。それか明らかに頭がおかしい連中だからな」
「触らぬ神に祟りなしですね」
駅員達も子供達と大して変わらないことを言う。
「そういうことですね」
「ああ。数だけは多いしな」
まさに数だけはかなりのものだ。
「だからな」
「そうですよね。そのまま行ってもらうに限りますね」
「ああ。変態は相手にするな」
「わかりました」
「黙って聞いていれば随分言ってくれるでおじゃるな」
「誰が変態よ、誰が」
ケガレシアとシズカが口を尖らせて言う。
「失礼な駅員でおじゃる」
「まあここで暴れるつもりはないけれど」
少なくともそのつもりはないのであった。
「しかし。奈良か」
「聖杯はないがプレシャスは多そうじゃな」
スレイプニルと月光が言う。
「それはそれで面白そうな場所だ」
「もっとも今はプレシャスではなく聖杯じゃがな」
「まずはアニメの店に入らない?」
トードはそうした店に行きたがっていた。
「ここではあまり見回ることができなかったし」
「遊びに行くのではないのだがな」
ブリッツは一応こう言いはした。
「しかし。何故かな」
「楽しみだよな」
「そうね」
ホンゴブリンとサキュバスも何だかんだで楽しんでいる。
「では行くか」
「その奈良に」
「丁度電車が来たわね」
ウェンディーヌが言ったところでその近鉄の派手なカラーリングの電車が来た。様々な文字が描かれ一目見ただけでは何かわからない。
「派手な電車ね」
「あそこの特急はそうでもないけれどね」
ワイバーンは今発車しようとする黄色と紺色のカラーリングの電車を見ていた。
「何でこんなに派手なのかな」
「中々いい配色ですね」
ヒラメキメデスはかなり気に入っていた。
「清潔感溢れるのではなくこうした異様な配色こそが落ち着きます」
「それもそうだよな。何かこうした電車に乗って行くのもな」
「いいわよね」
ヤバイバとツエツエも上機嫌である。
「じゃあ今からな」
「行きましょう」
こうして彼等は電車に乗り込んだ。ここで特急が発進した。
「さて、じゃあ京都まで」
「遊んでいきましょう」
戦隊の面々は同じ駅にいる彼等には全く気付いていない。
「奈良って何か美味いものあったか?」
「柿の葉寿司?」
「何か他にはないかな」
「あるんじゃないの?」
聖杯のことも戦いのこともあまり考えてはいない。
「適当なお店に入って」
「それで行くか」
「そうよね」
そんな話をしながら動きだす光景を見ていた。
「じゃあ京都よさようなら」
「また来る日まで」
「何か寂しいですね」
先生も一緒にいた。
「もっといたい気もしますが」
「そうだけれどね。それはね」
小梅もそれに賛成する。
「名残惜しいけれど」
「この戦いが終わればまた来たいよね」
アラタもそれは同じだった。
「天界にいるのも悪くないけれど」
「まあそれも戦いの後で」
「楽しく行くか」
「そうよね」
こうして京都を後にする。そしてその後で急行も出発した。
「さあ、ビールでおじゃる」
「するめにゆで卵に」
「あとはポテトチップスもあるわよ」
七人の席にそれぞれ行儀よく座りながら楽しくやっていた。
「奈良まで少しだけれどな」
「それまでは明るく楽しく」
「そうしていくか」
「しかしな」
ドウコクは自分の酒を飲んでいた。彼も今は全くいらいらしていない。
「この連中と一緒にいたら飽きたりすることはないわ」
「ほんまですなあ」
アクマロはチョコレートを美味そうに食べている。
「この戦いは何かと楽しいことばかりです」
「俺にとってはどうでもいいことだ」
十蔵は一人刀を抱き座っているだけである。
「ただな」
「ただ。どうしたんだい?」
「この雰囲気も悪くはない」
こう薄皮に返しはした。
「落ち着くものだ」
「その通りじゃな」
「こうして皆で仲良くやるのがいい」
ヴァッフォとミゲラは楽しく飲みながら朗らかに笑っている。
「さて、それでは」
「いざ奈良に」
彼等もまた奈良に向かっていた。戦いの場はもう一つの古都に変わろうとしていた。そしてあらたなことが起ころうとしていた。
第九話 完
2010・3・14
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