のびあがり
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第三章
「わしは生きものではない」
「じゃあ何かしら」
「本当に妖怪でしょうか」
琴子は美玖に言った。
「それなら」
「そう考えるのが妥当よね」
「その通りだが」
何かもそれは認めた。
「驚かんか」
「だってね」
美玖は酔漢の目で答えた。
「私達の学校妖怪のお話多いから」
「妖怪に親しんでおるか」
「妖怪出る漫画やアニメなんて星の数位あるし」
「滅茶苦茶多いですね」
琴子も言った。
「そうしたアニメの主題歌歌いたいですね」
「そこから人気出たいわね」
「何だ、お主達歌手か」
妖怪は二人の発言から察した。
「そうなのか」
「アイドルよ、二人組の」
美玖はこう答えた。
「グループ名はトゥインクル、覚えておいてね」
「そうしておこう」
「そういうことでね」
「名乗ったからには名乗り返そう」
妖怪は律儀に言ってきた。
「わしはのびあがりだ」
「そうした妖怪なのね」
「見て視線を上げる分だけ大きくなる」
「あっ、それでですね」
琴子はそう聞いて言った。
「何処までも高くなりますね」
「見上げるだけな」
「果ては通天閣みたいに」
「いや、大阪城より低い」
のびあがりはそこまではと返した。
「あの天守閣よりな」
「通天閣どころかですか」
「そうだ、最近タワーマンションもあるが」
大阪にだ。
「新今宮の辺りにな」
「南海の駅からも見えるんですよね」
「わしは精々十メートルだ」
「それ位ですか」
「あそこよりも低い」
すぐ傍のパチンコ屋の駐車場もあるビルを観て言った。
「むしろな」
「そうですか」
「あそこよく行くわね」
美玖はそのビルを観て話した。
「パチンコしないけれどね、私達」
「お風呂入りますね」
「あそこのね」
「スーパー銭湯に」
「そうなのよね」
「待て、酔って風呂に入るな」
のびあがりはそれは止めた。
「身体に悪いぞ」
「だから今日は寝るわよ」
「歯を磨いてそうします」
二人はそこは断った。
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