月の向こう側
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第三章
「くれぐれもです」
「付の作物は食べない」
「そのことは絶対に」
「わかりました」
「ですから私達は私達で田畑を営んでいます」
かぐや姫がこのことを話した。
「そうしてです」
「大きくならない様にしていますか」
「そうしています」
かぐや姫は忍にその通りだと答えた。
「いつも」
「そうですか」
「はい、ですから」
それでというのだ。
「私達は人の大きさのままです」
「兎さん達もですね」
「他の月に住んでおられる方々も」
自分達以外のというのだ。
「左様です」
「そうですか」
「水も空気もありますので」
「月の裏側には」
「幸せに暮らしています」
「そうですか、ですがかぐや姫さんが実在するなんて」
信じられないといった顔でだ、忍は述べた。
「創作のことでしかないと」
「物語は時として現実を書いたものがそうなっています」
かぐや姫は忍に微笑んで答えた。
「そうしたものです」
「そうですか」
「はい、ですから」
それでというのだ。
「私達もです」
「実在されてるんですね」
「付の向こう側即ち裏側に」
こう言うのだった。
「そうなのです」
「そうですか、ただ本当におられたので」
忍は小学生の時に言ったことをまた思い出してだった、かぐや姫に事情を話した。すると月の姫は優しい笑顔で答えた。
「どうぞ」
「それじゃあですね」
「はい」
まさにというのだ。
「ご一緒に」
「すいません、それじゃあ」
「皆さんで撮られますね」
「そうします、失礼します」
「どうぞ」
明るくだ、かぐや姫は答えた。
「遠慮は無用です」
「そうですか」
「私達の仕事には観光もありまして」
それでというのだ。
「一緒に写真を撮ってもらうこともです」
「お仕事ですか」
「はい」
そうだというのだ。
「だからです」
「ここはですね」
「どうぞ」
「わかりました」
忍はそれならと頷いた、そしてかぐや姫達と記念写真を撮った。それが終わってからさらにだった。
一家で月の観光を楽しんだ、それが終わって地球に戻ると。
「まさかだったわ」
「かぐや姫さんがいるなんて」
「ええ、小学校の時は有り得ないと思っていたけれど」
それがというのだ。
「実際だったなんて」
「世の中わからないわね」
「全くよ」
友人に苦笑いで応えた、だがその苦笑いは明るいものだった。それは月旅行が楽しいものであったからだった。それでまた行こうと思うのだった。
月の向こう側 完
2024・7・15
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