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花と果物

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第二章

「ならばだ」
「処刑ですね」
「ドロテアを捕らえ」
「そうしますね」
「そうする」
 こう言ってだった。
 総督は今度はドロテアのところに兵を送り彼女を捕らえさせた、そして最後に棄教する様に言ったが首を横に振ったからだった。
 ドロテアを処刑することにした、こうして彼女は処刑場に送られることになったがその時にだった。
 総督に仕える者の一人であり処刑の監督を務めている若い法官、如何にもローマ人といった縮れた黒髪に太い眉に逞しい身体と割れた顎を持つ彼がドロテアに言った。
「今も信仰を棄てぬか」
「はい」
 ドロテアは囚人の服で毅然として答えた。
「神に仕える者として死にます」
「強情だな」
「そう言って下さって結構です」
 ドロテアの言葉は変わらなかった。
「私は死して天国に行くのですから」
「そなた達の神の場所にか」
「そうです」
 まさにというのだ。
「ですから恐れもありません」
「ならだ」
 法官はドロテアの言葉を受けて彼女に言った。
「そなたの信じる天国から欲しいものがある」
「と、いいますと」
「花と果物だ」
 ドロテアに笑って話した。
「そうだな、薔薇と林檎だ」
「その二つですか」
「それを欲しいものだ」
 こうドロテアに言うのだった。
「私はな」
「その二つですか」
「そうだ」
 まさにというのだ。
「そなたの信仰が本物でだ」
「神がおられるのなら」
「そうであるなら貰えるな」 
 その薔薇と林檎がというのだ。
「左様だな」
「確かに」
 ドロテアも確かにと頷いた。
「神がもたらしてくれます」
「今ここでもな」
「そうなります」
「若しその二つが来ないならだ」
 法官はドロテアにこうも言った。
「棄教せよ」
「そう言われますか」
「そうせよ、そうすれば助かるしな」
「私は命より信仰を選びます」
「ではその二つが来るというのだな」
「今ここに」
 ドロテアの声は確信しているものだった、そして。
 法官はその二つは今自分達の周りには全くない、処刑場らしく荒野であることを確認してそうしてだった。 
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