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仮面ライダーディボーン

作者:地水
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仮面ライダーディボーン・前編

 
前書き
舞台は現代の日本、そこに現れるは太古から蘇った新たなる生命。
相対するは同じく太古の力を持った青年。

いざ、種を超えたバトルがいざ火蓋が落とされた。 

 
 『恐竜』、それは太古の地球に存在していた巨大なる身体を持ったかつての王者。
地上を闊歩し、我が物顔で支配していた彼らは様々な要因による滅びによっていつしか姿を消した。
地球の支配者を霊長類から進化した人類に明け渡し、恐竜はもはや過去の遺物となった。

だが、IF(もしも)の話。
彼ら恐竜が現代に蘇ったら?
恐竜が進化した存在が現代の地球に蘇ったら?
恐竜人間(ダイノサウロイド)が人類と相まみえる事になったら?

―――これは、太古に刻み込まれた記憶(想い)を胸に、蘇った恐竜達と戦う一人の青年と恐竜人間の話。



~~~~~


 神奈川県・横浜市。
海沿いの道路を走らせながら、一台のバイクがとある場所へと向かっていった。
オレンジ色を主体としたオンロードバイク、その座席に座るのは一人の青年。

「ようやくついたぜ、横浜!」

バイクに乗りながら横浜へと辿り着こうしているのは、一人の青年―――『兵藤 暁(ひょうどう あかつき)』。
元気ハツラツとした口調で目的地へ辿り着いた事を喜びながら、バイクを止めてヘルメットを脱いだ。開放された黒い髪を靡かせながら、目の間に広がる海と横浜の近未来的な街並みが広がる。

「んんー、実に都会だ! 海とビルが調和すること街がなーんかいいんだよね!」

『おいアカツキ、観光気分に使ってるわけにはいかねぇぞ』

有名な都市の一つでもある横浜に辿り着いて浮かれている気分の暁へ、イライラとした口調の声が話しかけてくる。
暁以外に周囲には誰もいないが、暁は特に気にする様子もなく、その声に答えた。

「別にいいだろ、ディーリー? こういう都会ってのはいつぶりかなぁ! ああ楽しみで仕方ないな」

『おバカ、ココにいるのは確かだ。被害が出る前にさっさと倒すぞ』

「ああもう、分かったよ。探せばいいんだろ、探せばさ」

『ディーリー』と呼んだ謎の声に暁は渋々従いながら、横浜の中心地へと向かおうと再びバイクを走らせることにした。
暁を待ち受けるのは何者か、彼らが追いかけるのはどんな目的か。



~~~~~


横浜、赤レンガ倉庫。
観光として多くの人々が行きかうこの場所、そこに栗色の髪をポニーテールに纏め上げた女性が歩いていた。
服の上からでもわかるほどのメリハリの効いたスタイルを持った人物―――『梅花 瀬恋奈(うめばな せれな)』はこの横浜へ観光に来ていた。

「ふっふふーん、いいわね。神戸とか札幌もいいけど、住みやすい横浜が来やすくていいのよね」

鼻歌を歌いながら、彼女は観光案内の雑誌を見ながら散策していた。
普段は東京近郊のとある街にてパン屋のアルバイトとして住んでいるのだが、趣味は旅行だったりする。

「赤レンガ倉庫の後はどこ向かおうかしら。やっぱり横浜中華街かしら、それとも横浜ミュージアム? 横浜スタジアム? ああ、楽しみだなぁ!」

横浜観光に胸を高鳴る中、浮足立つ様子を隠そうともせず、赤レンガ倉庫を堪能しようとする。
だが、そんな彼女の頭上を一つの影が過ぎった。

「んん? 何かしら……?」

瀬恋奈は何事かと思って影が過ぎった方向へ振り向いた。
視線を向けた先には、赤レンガ倉庫の屋根に立つ【人型の何か】……一瞬、目の錯覚かと思ったが、すぐにそうではないと瀬恋奈は思い知る。

―――何故なら、爬虫類の目に似た双眸が瀬恋奈の姿を捉えたからだ。

「えっ……?」

『シャァア!』

瀬恋奈が驚いたその一瞬、人型の何かの姿が消失する。
次の瞬間、瀬恋奈の眼前に拳を構えた人の姿が目に入った。
振り抜かれた拳を瀬恋奈は咄嗟に避け、地面へと転がり込む形で回避した。

「い、いきなり何をするんですかッ!?」

『貴様、ガンつけたな?』

「が、ガン……?」

『おもっくそガンつけただろ? このオレっちに、ガンつけたなぁ!!』

赤レンガ倉庫のド真ン中の位置で、男とも女とも似つかないがそれでも場違いな胴間声が轟く。
周囲の人々が怪訝な顔で様子を見ている中、瀬恋奈は目の前の人物を見据える。
擦り切れたローブを見に纏っているため顔はよく見えないが、体格的には細身ながら筋肉質……比較的男性に近い。
ローブの男は両拳を構え、まるでボクシングのボクサーのように拳を撃ち放った。

『どっせい!』

「ちょっとっ! こんな往来でぇ! やめなさいって!」

ローブの男が振り放つ拳の連撃を瀬恋奈は手ではじく形で捌いていく。
右フックを外側へ反らし、左ストレートを手の甲で弾き、放たれた右のアッパーを身体を反らして回避。
振り放たれる拳をせめて他の人に当たらないように努めながらも、いつまでも止める気配のないローブの男の態度に頭が来たのか、カチンと来た瀬恋奈は両手を突き出す。
花のように構えた両手を、再び左ストレートを振り放つ男へ放った。

「―――いいかげんにしなさいっての!!」

『ぶんばっ!?』

花のような両手の一撃が男へ炸裂、軽く宙を舞い地面へと転がる。
ふぅ、と瀬恋奈は一息ついた後、自分がしでかした事に気づいて我に返った。
周囲を見ると今までの激闘を見ていた観衆が拍手を向けており、自分が仕出かした粗相に顔を赤らめる。

「うぅぅぅ……恥ずかしい」

『かっ、ハァ……ハッ、やるじゃねえかぁ! 貴様ぁ!』

「えっ……!?」

恥ずかしがる瀬恋奈は聞こえてきた声に驚いた。
見ると、先程まで倒れていたローブの男が身体を鳴らしながら起き上がったのだ。

「うそっ……梅花を食らって無事な人なんて、今までいなかったのに」

ローブの男を見てあり得ない表情を浮かべる瀬恋奈……それもそのはず、彼女は"とある流派の拳法"の有段者である。
数少ない身内と共に幼少の頃から身につけた武術、その腕前は当世での継承者に相応しいと言われるほど。
例え成人の男性でも昏睡させるほどのその技の一撃を食らって平然と立ち上がった男に驚きを隠せなかった。

『オレっちをお前ら人間と一緒にしたら大怪我見るぞ? もっとも大怪我負わせるほどの一撃をブッコむのはこれからだッッ!』

「……ッ!!」

ローブの男から発する気配の違いに一早く察知した瀬恋奈は身構える。
男から発する殺気は人間の者とは違った……まるで、生きるために標的を狩らんとする獣のそれだ。
このままでは自分どころか周囲の人々まで巻き込むかもしれない。
瀬恋奈が心配しながらローブの男の出方を伺っていたその時、第三者の声がかかる。


「はいはい、時代遅れの私闘をやるのはご法度だぜ」


その身を躍り出る様に現れたのは黒髪の元気そうな雰囲気の青年。
瀬恋奈を守るように背中へ回し、青年――暁は不敵な笑みを浮かべる。
間を割って入るかのように登場した暁にローブの男は怒号を上げる。

『あんだテメェ、邪魔だ貴様ぁ! 戦いに首ィ突っ込んでんじゃねえ!!』

「ハッ、女の子相手に危険な目に晒すのはダメだ。しかもとびっきりの別嬪さんだ。余計にダメだ」

「べっ、別嬪さん!?」

ローブの男の言い分を鼻で笑いながら、暁は褒める言葉を混じらせながら返した。
別嬪さんと言われて顔が真っ赤になりながら驚く瀬恋奈だが、そんな彼女を他所に暁は『何故狙われているのか』と聞き出そうとする。

「というか、なんで彼女を襲おうとするんだよ?」

『その女はオレっちにガンを付けた。それだけで戦う理由は十分だよ!』

「なんだそのヤンキー理論は……ん、つまり彼女をやっつけたいわけか」

ローブの男が告げた理由を聞いて、暁は瀬恋奈を見やる。
そして不敵な笑みを浮かべると、彼女の身体を抱き上げる。

「ちょいと失礼するぜ」

「へっ、きゃぁあっ!?」

「さーて、こい! レックスレイダー!」

瀬恋奈を抱きかかえたままローブの男の元からから逃げ去った。
ローブの男は追いかけようとするも、何処からともなく現れたオンロードバイクが登場。
オレンジ色を基調としたバイク――『レックスレイダー』は暁と瀬恋奈を乗せると、目にもとまらぬ速度で逃げていく。
赤レンガ倉庫から離れていく彼ら二人の背姿を見て、取り残されたローブの男は叫だ。


『てんめぇ、待ちやがれ! そいつはオレっちの好敵手(獲物)だぁぁ!!』

ローブの男は手に持ったのは恐竜の化石によく似た、牙の外見をした錐体型アイテム。
横面に"石のような頭部を持った恐竜"が描かれており、男はその牙型アイテムの根元部分に備えたスイッチを押す。

【PACHYCEPHALO】

電子音声と共にローブの男は牙型アイテムを突き刺した。
その瞬間、その男の肉体は変貌していき……。
そのまま、常人ならざる脚力で逃げた暁達を追いかけていった。


~~~~~


同じ頃、レックスレイダーにて横浜の街中の道を駆け巡る暁と、彼の後ろを掴まりながら乗る瀬恋奈。
瀬恋奈は暁の身体に腕を回しながら掴まっており、彼のぬくもりを感じながら彼に対して質問をぶつけた。

「あの、その……何で、私を助けてくれたのですが?」

「え? そりゃあ女の子助けるのは当然でしょ?」

「その、自慢じゃないですけど……人を守ることぐらいにはできますよ」

「それでもだよ。君、可愛いじゃないか」

暁の真っ直ぐな言葉に、質問をした瀬恋奈は顔を赤らめる。
今まで正義感が強い性分と腕っぷしの強さで女の子扱いされることはほぼ皆無だった自分にとって、これほど自分を可愛いや別嬪さんと言ってくる彼には少し戸惑っていた。

「そういえば、お名前聞いてませんでしたね。私は梅花 瀬恋奈といいます」

「瀬恋奈さんか、俺は兵藤 暁。暁って呼んでくれ」

お互いの名前を教えあう暁と瀬恋奈の二人。
瀬恋奈的にはもう少し、彼とのドライブを楽しみにしたかった。

だが、―――戦いの時は唐突に訪れた。

『アカツキ! 奴さんが来たぜ!』

「へっ、な、なに!?」

暁の肩に現れたのは、拳大にも誇るほどの『小さな恐竜』。
機械のようなオレンジ色のボディに、鋭い緑色の瞳、胴体部分には恐竜を模した紋章(クレスト)がつけられている。
何よりこの機械の恐竜が喋った事に驚く瀬恋奈。
だが、瀬恋奈が機械の恐竜の事を暁へ追及する前に怒号が上がる。


『待ちやがれぇぇぇぇ!!』


瀬恋奈がその声を耳にして振り向けば、後方から現れたのは一体の『異形の怪人』。
爬虫類を思わせるような外見を持ち、紫色と灰色の体色を持ち、その両腕は石頭恐竜と呼ばれる恐竜の一種を模したグローブ上の籠手に包まれている。
さながら恐竜人間と呼ぶのに相応しいその怪人はその常人離れした脚力でレックスレイダーを走らせる二人に迫る。

『ぶっこむぜぇぇぇぇぇ!!』

「ひぃ!? なんなのあれ!?」

『あれはディノンクルス! 太古の地球に跋扈していた生物の頂点・恐竜を現代にて"人造人間(ホムンクルス)"として復活させた全く新しい生物兵器(バイオウェポン)だ!』

瀬恋奈達が乗るへレックスレイダーと迫る恐竜人間――『ディノンクルス』
ディノンクルスの事を説明する機械の恐竜に、見たこともない怪物を目の前にしながらもその話を何とか聞こうとする瀬恋奈。
ディノンクルスと暁のレックスレイダーの追跡劇は少しの間続き、両者は海浜公園へとたどり着いた。

『ハッ、ようやく追い詰めたぜ!』

紫色のディノンクルス――『パキケファロディノンクルス』は、両腕を構え、ジャブの構えを取る。
その声は先程のローブの男そのもの……人間とは異なる怪人としての本性を現した事に瀬恋奈は驚き、恐怖する。
だが、彼女の不安を拭い去るように暁は余裕満々な不敵な笑みを浮かべた。

「いいや、人があんまりいない方が都合がいいのさ。ディーリー!」

『ここなら人に被害はでないし、いいだろう……いくぞ!』

暁の言葉と共に、片に乗っていた機械の恐竜――『ディーリー』は叫んだ。
上空へ飛び上がると、そこからは身体が変形し始めた、大きなバックルのついた一本のベルトへと変化。
ディーリードライバーとなったそれは暁の腰部に装着される。

【D-READRIVER】

「ディノンクルス、瀬恋奈さんの代わりに俺がお前と戦ってやるぜ」

【MENGANEURA】

暁は懐から取り出した牙型アイテム・Dファングのスイッチを押した。
電子音声と共に、赤と緑で彩られた"メガネウラDファング"をディーリードライバーのスリット部分にセット、そのまま引き裂くような動作で読みこむ。

【D-READ…MENGANEURA】

「いくぜ、変身!」

暁の掛け声と共に、ドライバーから投影された3D映像・ホログラフアバターが出現。
オレンジ色の小型肉食恐竜(ディノニクス)と、赤・緑・白で彩られた巨大トンボ『メガネウラ』が暁の周囲を駆け巡り、そして粒子状となって彼の身体に吸着してその姿を変えていく。
オレンジと銀色のアンダースーツ、その上に身にまとうのは赤の装甲、背中にはトンボの羽を模したマフラー。
頭部にはオレンジ色のヘルメットと、顔面を覆うトンボを模した緑色の複眼を持つ仮面。
まるで仮面の戦士というべき存在に変身を遂げた暁を、その姿に相応しい名をディーリードライバーが告げる。


【D-BONE!MEGANEURA-CROSS】


「仮面ライダーディボーン、復活……なんてな」


―――仮面ライダーディボーン・メガネウラクロス。

今ここに、太古の記憶を引き継いだ大自然の戦士が『復活』した。 
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